田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『三十四丁目の奇蹟』

2019-04-10 12:55:41 | 1950年代小型パンフレット
『三十四丁目の奇蹟』(47)(1990.12.)



 ニューヨークのデパートで、サンタクロースとして雇われた白ヒゲの老人クリングル(エドマンド・グエン)。彼のサンタは評判を呼ぶが、彼は「自分は本物のサンタだ」と主張し、ついには裁判が開かれることになる。監督はジョージ・シートン。脚本はバレンタイン・デイビス。

 フランク・キャプラの『素晴らしき哉、人生!』(46)と並ぶ“クリスマス映画の古典”。そもそもクリスマスはキリスト教のお祭りであって、そのうわべだけを頂いて騒いでいる我々日本人に本来の意味が分かるはずもない。だから、この映画で描かれたサンタクロースの存在の有無を裁判にかけてしまう、などという感覚は理解できないところがあるのだ。

 まあ『3人のゴースト』(88)ではないが、そもそもクリスマスだけを特別な1日だとは考えずに、毎日がクリスマスだと思えば、みんなもっと幸せに暮らせるのかもしれないのだが…。

モーリン・オハラ


エドマンド・グエン

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ケーシー高峰と「ベン・ケーシー」

2019-04-10 08:38:59 | 映画いろいろ


 「グラッチェ、セニョール、セニョリータ」。エッチな医学漫談で楽しませてくれたケーシー高峰が亡くなった。客いじりと間が絶品で、大好きな芸人の一人だった。その芸名は、懐かしの医療ドラマ「ベン・ケーシー」から取ったとか。で、ケーシーさんは漫談の時はいつも白衣を着ていたが、医者や美容関係者が着る白衣の一種は“ケーシー型”と呼ばれ、その名の由来もこのドラマにあるという。

 「男、女、誕生、死亡、そして無限」のナレーションとともに、黒板に♂ ♀ * + ∞がチョークで書かれる。そしていきなりストレッチャーで運ばれる患者が写り、印象的なテーマ曲がバックに流れるというオープニングが衝撃的なドラマだった。ケーシー役のビンセント・エドワーズは「コンバット」のサンダース軍曹ことビック・モロー同様、この役のイメージが強過ぎて残念ながら俳優としては大成しなかったが…。未見だが「外科医・大門未知子」というドラマにベン・ケーシーという名の猫が出てくるらしい。
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『汚れた顔の天使』

2019-04-10 06:12:08 | 1950年代小型パンフレット
『汚れた顔の天使』(38)(1992.12.)



 死刑の宣告を受けたギャングのボス・ロッキー(ジェームズ・キャグニー)。彼と共にスラム街で育った牧師のジェリー(パット・オブライエン)は、彼と面会し、彼を崇拝するスラム街の少年たちのために“あること”を頼む。監督はマイケル・カーティス。

 自分にとっては“伝説の映画スター”の一人であるジェームズ・キャグニー。まだ若いうちに引退してしまったので、これまでは、テレビで見たビリー・ワイルダーの『ワン、ツー、スリー』(61)、ジョン・フォードの『栄光何するものぞ』(52)『ミスタア・ロバーツ』(55)あたりと、後年唯一復帰した『ラグタイム』(81)の印象しかなかった。つまり、ギャングスターとして鳴らした全盛期の部分が完全に欠落しているのである。

 その意味では、この映画はキャグニー再発見の恰好の一本と言えるのだが、実際に見てみると、思っていたほどのすごみはなく、小柄で身軽で早口で、どちらかと言えばやんちゃで憎めないキャラクターに映った。この映画でも共演していたハンフリー・ボガートや、ジョージ・ラフトといった同種と思われた俳優たちとは明らかに異質な感じがしたのである。もちろんキャグニーはギャング映画専門の俳優ではなく、歌も踊りも得意で、未見だが『ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディ 』(42)でアカデミー賞を受賞したことでも知られている。

 ところで、この映画は、キャグニー演じる主人公のギャングが、決して極悪非道には描かれておらず、ラストに至っては改心?まで示す。そうした“中途半端な悪党”を描いたために、ハワード・ホークスの『暗黒街の顔役』(32)や黒澤明の『酔いどれ天使』(48)同様に、本筋では悪を否定しながら、主人公が魅力的なあまり、彼らの滅びの美学や哀れさが際立つという、反作用を生み出してしまっている。そうした流れは「ゴッドファーザー」シリーズなどにも踏襲されている。

ジェームズ・キャグニー

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