『ウエスト・サイド物語』(61)(2010.4.4.午前十時の映画祭TOHO・シネマズ六本木)
久しぶりに大画面でこの映画を堪能した。線画が印象的なソウル・バスのタイトルデザインに序曲が重なる。やがて線画はマンハッタンの実景に変わり、俯瞰でニューヨークの風景が映される(旧ヤンキースタジアムも映る)。そして地上に降りたカメラは不良集団のジェット団を捉える…。
ロバート・ワイズは俯瞰から降りてくるオープニングを、後の『サウンド・オブ・ミュージック』(65)でも使ったが、70ミリミュージカルとしてのスケールの大きさを感じさせる上では効果的だ。
この映画は、社会派映画も得意な職人監督のワイズ、ジェローム・ロビンス振り付けによる圧倒的なダンス(マイケル・ジャクソンも影響を受けているのでは?)、そしてレナード・バーンスタインの音楽が見事に融合して生み出された奇跡の映画。
その白眉は、それぞれの思いが別々の「トゥナイト」に乗って始まり、やがて一つになっていくクライマックスのカットバックだ。「トゥナイト」「マリア」「アメリカ」「クール」…の何と素晴らしいことか。
とは言え、今回は「ロミオとジュリエット」を現代によみがえらせたアーサー・ローレンツの原作、アーネスト・レーマンの脚本、そしてダンスシーンを見事に映し取ったダニエル・L・ファップのカメラワークも素晴らしいと改めて感じさせられた。
俳優陣は、ジョージ・チャキリス、リタ・モレノはもちろんいいが、あまり語られないラス・タンブリン(後に日本の『サンダ対ガイラ』(66)に出た)も結構頑張っているぞと言ってあげたい気がした。
そして、サイモン・オークランド(刑事)、ネッド・グラス(ドラッグストアの親父)など、踊らない脇役は目立つが、ちょっとかわいそうなのは、主役ながら歌は吹き替えのリチャード・ベイマー(トニー)とナタリー・ウッド(マリア)。2人はラスト近くでやっと芝居をさせてもらった感じだが、マリアがトニーの亡がらを抱いて「ドント・タッチ・ヒム!」と叫ぶシーンに、「私は歌わない。けれども私は女優よ」というウッドの意地を見た気がして感動させられた。
(追記)この映画の公開当時のパンフレットには「成功物語 おどろくべきミリッシュ社」というコラムが載っている。そのミリッシュ・カンパニーとは、ハロルド、マービン、ウォルターの3兄弟が設立した独立系の映画製作会社のこと。
主にユナイトと提携し、『ウエスト・サイド物語』の他にも、『騎兵隊』(59)『お熱いのがお好き』(59)『アパートの鍵貸します』(60)『荒野の七人』(60)『噂の二人』(61)『非情の町』(61)『大脱走』(63)『ピンクの豹』(63)『生きる情熱』(65)『ハワイ』(66)『夜の大捜査線』(67)『華麗なる賭け』(68)『屋根の上のバイオリン弾き』(71)など、硬軟取り混ぜたいい映画を残している。
パンフレット(61・不明)の主な内容は
製作エピソード/あらすじ/ロケーションこぼればなし/アイデア・マン・ロケーションストーリー/成功物語おどろくべきミリッシュ社/ナタリー・ウッド、リチャード・ベイマー、ラス・タンブリン、リタ・モレノ、ジョージ・チャキリス/ちょっとした動きにも意味がある/ロバート・ワイズ、ジェローム・ロビンス/ウエスト・サイド物語の音楽レナード・バーンシュタイン、スティーヴン・ソンドハイム、ジョニー・グリーン
『殺したい女』(86)
『フライング・ハイ』『裸の銃を持つ男』シリーズのジム・エイブラハムズとザッカー兄弟によるシュチエーションコメディー。ミック・ジャガー、ビリー・ジョエル、ブルース・スプリングスティーンの曲も流れる。
ある日、実業家のサム(ダニー・デビート)の妻バーバラ(ベット・ミドラー)が誘拐された。ところが、いつか妻を殺したいと思っていたサムは、この機に乗じてバーバラを亡き者にしようと考える。だが、それを知ったバーバラは、犯人たち(ジャッジ・ラインホルド、 ヘレン・スレーター)をそそのかしてサムに逆襲する。
この映画は、2人組の小悪党が身代金目的で誘拐した子供に逆に振り回されるという、オー・ヘンリーの短編小説『赤い酋長の身代金』からアイデアを得ているらしい。ミドラーの怪演が見どころだ。
オー・ヘンリーの『人生模様』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/38699db84b97bfb0da88704c13b053bb