田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『スリーメン&ベビー』

2019-06-27 14:55:10 | 映画いろいろ
『スリーメン&ベビー』(87)(1991.6.22.)

   

 優雅に独身生活を謳歌していたピーター(トム・セレック)、ジャック(テッド・ダンソン)、マイケル(スティーブ・グッテンバーグ)。ある日マンションの前に捨てられた赤ん坊を見付けた3人は、子育てに悪戦苦闘する羽目になる。
 
 この映画はフランス映画『赤ちゃんに乾杯!』(85)のリメーク版。とはいえ、こちらのハリウッド版でも結構楽しめる。というのも、主役の3人に、普段から人のいい役が多いグッテンバーグはまだしも、わざわざセレック、ダンソンという男くさい硬派の俳優をキャスティングして、父性愛というテーマを際立たせるあたりに、ハリウッド流のしたたかさが見られるからだ。監督はあの“ミスター・スポック”ことレナード・ニモイというのも意外性を感じさせる。
 
 この話は、そもそもは大昔のピーター・B・カインの原案が大元だろう。それを基に、ジョン・フォードの『恵の光』(19)、ウィリアム・ワイラーの『砂漠の生霊』(30)、リチャード・ボレスラウスキーの『地獄への挑戦』(36)、フォードの『三人の名付親』(48)など、西部劇として何度も映画化されている。どうやらその根底には聖書の教えがあるようだ。
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『ブルーサンダー』

2019-06-27 06:40:05 | 映画いろいろ
『ブルーサンダー』(1983.10.11.スカラ座)

  

 超高性能武装ヘリコプター「ブルーサンダー」がロサンゼルス市警に配備されることになり、従軍経験のあるベテラン刑事のマーフィー(ロイ・シャイダー)がテストパイロットに選ばれる。だが、武装ヘリをめぐる陰謀があることを知ったマーフィーは命を狙われることになる。
 
 それにしてもハリウッドは、映画の中で全てを現実のように見せてしまうのだからすごい、と改めて感じさせられた。この映画にしても、現代の科学技術やコンピューター機器の発達、国際情勢などを考え合わせれば、決して絵空事を描いているわけではないにしてもだ。
 
 実際、あんな超性能を持ったヘリコプターと空軍機が街の真上で銃撃戦を展開するなどということがあってはたまらない。ところが、この映画はそれを現実の出来事として見せてしまう迫力と、時代にマッチした恐ろしさを持ち合わせていた。
 
 特に、つい最近の大韓航空機撃墜事件で、米ソの電子戦争とも言うべき現実を知らされたばかりなので、この映画が描いた世界の恐ろしさが、さらに身近なものとして感じられたのである。
 
 しかも、この映画の奥には、またしてもベトナム戦争の影が色濃く描かれていた。それがシャイダーが演じた主人公のように、正の方向に向けばまだ救いはあるのだが、その逆、つまりマルコム・マクダウェルが演じた敵役のような行動を取る者もいる。そうした人間が超兵器を手にした時が本当の意味で恐ろしいのだ、などと他人事のように書いてきたが、この映画の空中戦を見ながら、まるでゲームを見ているかのように、手に汗握っていたいたオレのような観客の心理も怖いと言えば怖いのかもしれない。ジョン・バダムの職人技が光る映画だった。
 
 終映後、いつものように幕が下り…、とその瞬間、幕の奥のスクリーンから何やら意味ありげな文字がちらりと見えた。気になったので調べてみると、それは、この映画が遺作となった「ウォーレン・オーツに捧ぐ」という一言だったらしい。スカラ座さん、こういう不作法はよそうよ。
 
「今の一言」今から36年前、まだオスプレイもなく、AIも今ほど発達していなかった時代のメモ。幕が上がったり下りたりする映画館も、最近はめっきり少なくなった。
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