田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『スーパーマン リターンズ』脚本マイケル・ドハティ

2019-06-06 17:25:24 | 映画いろいろ
 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を監督したマイケル・ドハティは『X-MEN2』(03)『スーパーマン リターンズ』(06)の脚本も書いていた。後者はDCコミックスのジャスティス・リーグ以前に製作され、シリーズ化とはならなかった幻のスーパーマン映画。公開時はいかにも監督のブライアン・シンガーらしい映画だと思ったが、今回、過去作への懐古やオマージュに満ちた『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』を見て、意外にドハティの好みが反映されていたのかもしれないと思った。

『スーパーマン リターンズ』(06)(2006.9.13.丸の内ピカデリー)



 まず、あの印象的なタイトルバックにジョン・ウィリアムズ作曲のテーマ曲が流れてくるとやはり心が躍る。そしてブライアン・シンガーがインタビューに答えていた通り、例えば、アーカイブを利用したマーロン・ブランドの登場、グレン・フォードの写真、そしてエンドロールでのクリストファー・リーブ夫妻への献辞。何よりブランドン・ラウスが嫌味なくリーブをほうふつとさせるなど、全編にリチャード・ドナー版『スーパーマン』(77)への憧憬があふれていた。

 さらに「ハート・アンド・ソウル」のピアノ演奏で『ビッグ』(88)を、弱ったヒーローが自分の子どもの存在を知って復活する姿から『ナチュラル』(84)を思い起こさせる“遊び心”にも好感が持てた。

 とはいえ、これはあくまでリチャード・ドナー版に思い入れがあるノスタルジー派の感慨で、新たな観客たちの心にはどう響いたのだろうか。まあ決して魅力的ではないロイス・レイン(ケイト・ボズワース)に惚れ、ドジな悪党レックス・ルーサー(ケビン・スペイシー)に何故かいつも足元をすくわれるところがスーパーマンの不完全さを示していて面白いのだが。

 ただしシンガーの演出は『X-メン』シリーズ同様、テンポが速そうで遅いのが弱点で、全体のトーンも暗い。もっともこの暗さはシンガー本人の資質もあろうが、やはりアメリカが9.11同時多発テロを経験してしまったことと無関係ではあるまい。スーパーマンが間一髪で人を救えば救うほど、貿易センタービルの崩壊という現実がオーバーラップしてくるのは残念ながら否めない。そして“正義”が混沌とする今のアメリカでのスーパーマンの存在はどこか空しくもあるからだ。結局スーパーマンはもはやノスタルジーでしかないのか…。

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『続・夜の大捜査線』『夜の大捜査線/霧のストレンジャー』ミリッシュ・カンパニー

2019-06-06 12:34:14 | 映画いろいろ
 『夜の大捜査線』は、シドニー・ポワチエが演じたティッブスのキャラクターのみを引き継いで2作が作られた。

『続・夜の大捜査線』(70)



 原題は1作目の名ゼリフでもあった「They Call Me Mister Tibbs!」。市民運動を指導していた牧師が、売春婦殺人の容疑者となる。友人のティッブスは捜査を開始するが…。監督ゴードン・ダグラス、共演マーティン・ランドー。第1作同様、クインシー・ジョーンズの音楽は聴きものだが、映画自体はごく普通の刑事ものといった感じだった。

『夜の大捜査線/霧のストレンジャー』(71)



 原題は「The Organization=組織」。サンフランシスコにはびこる巨大な麻薬密輸組織にティッブスが立ち向かう。監督はドン・メドフォード。残念ながら、もはやテレビムービー並の出来だ。

 どちらも製作はウォルター・ミリッシュ。『荒野の七人』シリーズ(ミリッシュ製作は1作目のみ)同様、1作目のラストシーンの後の“夢追い”もほどほどにしないと、回を重ねるごとに出来が落ちていく悲しさを感じることになる。


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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

2019-06-06 09:26:51 | 新作映画を見てみた


 レジェンダリー・ピクチャーズ製作のモンスター・バースシリーズの第3作。前作『GODZILLA ゴジラ』(14)から5年後。極秘に怪獣の調査を行ってきた秘密機関モナークのエマ・ラッセル博士(ヴェラ・ファーミガ)と元傭兵の環境テロリスト・ジョナ(チャールズ・ダンス)のたくらみによって、ゴジラをはじめとする太古の怪獣たちが目覚め、世界各地を襲う。その中には、宇宙怪獣キングギドラもいた。

 全体のテーマは、人間と怪獣との共生、あるいは“神獣”としてのゴジラや怪獣たちなのだろうが、まず、暴走するエマと、彼女と娘を救おうとする元夫でモナークの元メンバーでもあるマーク(カイル・チャンドラー)の行動原理がよく分からない。というか、人間側の描写や設定があまりにも雑で閉口させられる。ただ、数ある日本のゴジラ映画にも、実はこうしたひどい話のものはたくさんあった。要は、怪獣映画とは、そうしたドラマ部分の欠点を忘れさせるようなインパクトが怪獣たちの描写にあるかどうかが勝負なのだ。

 その点、この映画は、監督のマイケル・ドハティのゴジラや怪獣たちへの熱い思いがあふれており、「怪獣映画を見た」という気分にさせてくれる。怪獣たちのバトルシーンの映像はすさまじいばかりだが、その中に、対ギドラ戦でのゴジラとモスラの共闘、ラドン(ロダン)と戦闘機との空中戦、赤ゴジラ…など、日本のゴジラシリーズへの敬意が多く見られるのだ。

 また、オリジナルの『ゴジラ』(54)につながる芹澤博士(渡辺謙)の役割、チャン・ツィイーは双子役、全編CGの怪獣たちなのに、ゴジラの中身=中島春雄に捧げる心などが、自分のような古くからのゴジラファンの琴線に触れるが、白眉は伊福部昭(ゴジラ)と古関裕而(モスラ)の音楽の引用であった。もちろん伊福部ゴジラは素晴らしいが、今回は古関モスラを聴いて思わず目頭を熱くした自分に驚いた。
 
 もともとモンスター・バースシリーズは、物語の設定やゴジラやコングの造形も含めて、東宝シリーズとは別物だと思っていたのだか、ここまでやられると、次回作(多分、ゴジラ対キングコング)にも妙な期待感を抱かされる羽目になる。

【ほぼ週刊映画コラム】『ゴジラ GODZILLA』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/292ad16b437a3cccd4fbad12a90e6595
『キングコング 髑髏島の巨神』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/70ea739a2f3829bdd948acb0dce3e188
【インタビュー】『キングコング 髑髏島の巨神』ブリー・ラーソン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d2324bde64e5f6844b09e6c0acf4160c

【コラム】ゴジラ映画、累計1億人突破
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2895cc7360f7590115dcd7168ac36ac8
ゴジラ(中島春雄)死す
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8921701bce7c5c532f75c4050264298b
『キングコング対ゴジラ<完全版>4Kデジタルリマスター』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/15933c015f12ba350b0c9e78bb82c1d7
『三大怪獣・地球最大の決戦』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0f6d38477ea8b3a216c1245474a85b4d
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