田中雄二の「映画の王様」

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【ほぼ週刊映画コラム】『長いお別れ』

2019-06-01 17:18:31 | ほぼ週刊映画コラム
エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

認知症の父と家族との7年間を描いた
『長いお別れ』



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1190400
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『グッドモーニング, ベトナム』バリー・レビンソン

2019-06-01 13:20:11 | 映画いろいろ
『グッドモーニング, ベトナム』(87)(1988.10.14.スカラ座)



 米空軍DJのクロンナウア(ロビン・ウィリアムズ)が、兵士たちを笑いとロックで癒やし、ベトナム人と触れ合いながら、戦争の冷酷さを知る1965年の5カ月間を描いた異色のベトナム戦争映画。監督はバリー・レビンソン。

 半ばコメディ仕立てのこの映画が、何ともいえない空しさや苦さを感じさせるのは、われわれが、この映画が描いたストーリーの後に、実際のベトナム戦争で起きた数々の悲惨な出来事を知っているからに他ならない。つまり、この映画の主人公が何をしても、結局現実は変わらなかったという空しさを感じるのだ。

 極端な話、この後泥沼化していくベトナム戦争下で、この映画に登場した可憐な少女が、キューブリックの『フルメタル・ジャケット』(87)で描かれたような、アメリカ兵を撃ち殺す少女に変身しても何の不思議もないし、愛すべきベトコンの少年は恐らく悲惨な最期を遂げるのだろう…。そんなふうに想像してしまう。

 それにしても、次から次へとコンセプトを変えて、よくもまあこれだけ多くのベトナム戦争映画が作られるものだと思う半面、それだけベトナム戦争がアメリカに与えた影響は強いものがあるのだと改めて知らされた思いがする。

 そんなこの映画は、『ナチュラル』(84)『ヤング・シャーロック~』(85)と、レトロ感覚の心温まるファンタジーを撮ってきたレビンソンの見事な変身、『ガープの世界』(82)に続くウィリアムズの怪演、鶴瓶の黒人版のようなフォレスト・ウィテカーの好演が相まって見事な映画に仕上がっている。

 ただ、主人公がDJだけに、スラングの連発に戸惑わされたのは否めない。正直なところ、われわれ日本人には理解できない悔しさが残り、やはり言葉の壁は大きいと感じさせられた。だが、そうした壁や、この後実際に起きる悲惨な出来事を踏まえながら、あえてサッチモの「この素晴らしき世界」を流し、ラストに国境を越えたソフトボール大会を描いたのは、作り手たちのせめてもの希望への思いとして心に残った。初めて目にする、不思議な味わいのあるベトナム戦争映画だった。
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『レインマン』バリー・レビンソン

2019-06-01 10:54:11 | 映画いろいろ
『レインマン』(88)(1989.3.3.スカラ座)


 高級車ディーラーのチャーリー(トム・クルーズ)は破産寸前。そんな中、父の遺産が自閉症の兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)への信託財産として運用されることを知る。チャーリーは遺産を手に入れるためにレイモンドを施設から連れ出し、ロサンゼルスに戻ろうとするが…。

 この映画の監督のバリー・レビンソンは『ダイナー』(82)『ナチュラル』(84)『ヤング・シャーロック~』(85)『グッドモーニング, ベトナム』(87)と、続けざまに快打を放っている。だから、その演出力には信頼が置けるし、加えてダスティン・ホフマン主演ということで、見る前から期待感は大きかった。

 見終わった今、その期待を裏切られることなく、さすがのホフマンと互角に渡り合っていたトム・クルーズの成長ぶりが際立っていたこともうれしい拾い物だった。何しろこの映画は対照的な兄弟を演じたこの2人のコンビネーションとコントラストなくしては成立しないからである。

 そして、自閉症という重いテーマを根底に持ちながら、それを前面に押し出してお涙頂戴式にしていないところが素晴らしい。最近の『ミッドナイト・ラン』(88)などにも見られたロードムービー+バディムービーとしての面白さと、次第に理解し合っていく兄弟の姿を半ばコミカルに見せながら、それでいて実は人間の奥深さや、現実の厳しさを描いているところがうまいのだ。

 これはレビンソンの前作『グッドモーニング・ベトナム』と同じく、あるテーマを真正面から描くのではなく、側面の描写を積み重ねることで、本筋を浮かび上がらせるという手法だ。レインマン=メインマンというタイトルのからくりが分かるシーンは特にいい。

 ところで、レイモンドの精神安定剤は暗記した「一塁手は誰だ」のギャグを復唱すること。趣味はメジャーリーガーの野球カードとペナント集めである。この小道具がストーリーの重要な鍵になる。やはりレビンソンは野球映画『ナチュラル』を撮り、『グッドモーニング, ベトナム』でソフトボール大会を描いただけのことはある。きっと彼は、野球の持つ魅力や奥深さを知り抜き、その魔力を信じているのだろう。
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ロバート・レッドフォードの『ナチュラル』

2019-06-01 08:03:09 | 映画いろいろ

 『さらば愛しきアウトロー』の試写の際、「ロバート・レッドフォードの出演映画で最も好きなものを“1本”」というアンケートがあった。で、1本とはあまりにも酷ではないか、と思いながらも考えてみた。

 『明日に向って撃て!』(69)『スティング』(73)はポール・ニューマンの映画でもあるし、同じく『追憶』(73)はバーブラ・ストライサンドの映画でもある。『ホット・ロック』(72)はある意味集団劇だし…と考えて消去し、残った『華麗なるヒコーキ野郎』(75)とどちらにするかと迷った挙句に『ナチュラル』(84)にした。かつて「ゲーリー・クーパーの後を継ぎ、大統領から野球選手までを演じられる男」と言われたレッドフォードにふさわしい映画だと思ったからである。



『ナチュラル』(84)(1989.3.5.)

 先日、バリー・レビンソン監督の最新作『レインマン』(88)を見たばかりだが、テレビで、同監督の『ナチュラル』を再見。改めて、この映画は、何度見ても映画と野球が好きな者にとってはたまらないプレゼントだと感じた。

 バーナード・マラマッドの原作における悲劇的なラストを希望に変えただけでも見事なのに、全編にあふれるアメリカンドリームの精神、父と子のキャッチボールの美しさ、野球を見つめる少年たちのまなざし、ゲームシーンのリアルさなどから、アメリカにおける野球を神話的に捉えていることを感じさせる。

 何より、監督のレビンソン、主演のレッドフォードをはじめ、スタッフ一同が、野球の持つ夢を信じてこの映画を作ったことが分かるのがうれしい。ある意味、この映画を超える野球映画は作れないのではないかと思う。

 そういえば、以前、ヤクルトの長嶋一茂が「この映画を見てプロ野球選手になることを決めた」という記事を読んだ覚えがある。それが真実なら、彼はこの映画の父と子のキャッチボールのシーンに、自分とミスターを重ね合わせたのかもしれないなあ。

All About おすすめ映画『ナチュラル』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/24ecc0d5a7d2cc41418b8781ab55fb89

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