田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『J・J氏の男子専科』(植草甚一スクラップブック)『映画だけしか頭になかった』

2019-06-14 14:17:07 | ブックレビュー
 市川真間の古書店「即興堂」で偶然発見。



 今回は、カシアス・クレイ(後のモハメド・アリ)に関する数編のコラム「ぼくはボクシングが好き」と、珍しく西部劇について書いた「なぜ西部劇が好きじゃないんだろう」、『真夜中のカーボーイ』の原作小説から始まり、ワイルド・ウェスト、ゴールド・ラッシュ、ブーム・タウン、OK牧場の決闘、ビリー・ザ・キッド、ロバート・ワーショウの西部劇論、そして英雄たちの末路の列記へとつながっていく「西部伝説の英雄たち」が面白かった。



 と、久しぶりの“植草甚一復習の旅”も終了し、『映画だけしか頭になかった』に戻ってきた。これは植草さんが書いた映画に関するコラムなどを一冊にまとめたもので、スクラップブックよりも先に出版された。和田誠の装丁、日活名画座のポスターも見もの。1980年代、オレの“植草甚一への旅”はこの本から始まったのだ。
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「なつぞら」『白蛇伝』

2019-06-14 08:18:23 | 映画いろいろ
 朝ドラ「なつぞら」の劇中アニメ「白蛇姫」が完成した。モデルとなった東映動画製作の『白蛇伝』(58)は日本最初のカラー長編漫画映画。監督・脚本は藪下泰司。声の出演は森繁久彌と宮城まり子だった。



 ということは、ドラマの亀山蘭子(鈴木杏樹)のモデルは宮城まり子でいいとしても、相手役が弁士出身の徳川夢声をモデルにしたと思われる豊富遊声(山寺宏一)というのは変なのだが、「森繁久彌ならもっとうまい」というセリフがあった。このあたり、何か事情があったのか、それとも単なるお遊びなのか。

 で、奥原なつ(広瀬すず)のモデルは実在の奧山玲子というアニメーター、兄の咲太郎(岡田将生)にモデルはいないが、車寅次郎のイメージでやっているという。

 以前、仲努(井浦新)のモデルは藪下泰司か?と思ったが、違っていた。東映動画関係者のモデルは、大杉満(角野卓造)=大川博、露木重彦(木下ほうか)=藪下泰司、仲努(井浦新)=森康二、井戸原昇(小手伸也)=大工原章、下山克己(川島明)=大塚康生となるらしい。今後も、高畑勲をモデルにした人物を中川大志、同じく宮崎駿を染谷将太が演じるという。

「なつぞら」『ファンタジア』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ec8644462233bd0ba8ab71001357f853
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『スパルタカス』

2019-06-14 06:02:13 | 1950年代小型パンフレット

『スパルタカス』(60)(1991.10.31.日比谷映画)



 共和政ローマ時代の奴隷スパルタカスの反乱を描いたスペクタクル史劇。カーク・ダグラスが製作総指揮で主演。監督はスタンリー・キューブリック。

 15年ほど前にテレビで前後編に分けられたものを見た。その時の印象は、カークの一人舞台というもので、それほど心に残ってはいなかった。ところが、こうして改めて映画館できちんとした形で見直してみると、自分でも驚くほど見入ってしまった。

 キューブリック自身は、商業映画的だとして、この映画をあまり好んでいないようだが、たとえ、半ばカークに押し付けられて撮ったものだったとしても、この経験が、後の、70ミリ撮影を駆使した『2001年宇宙の旅』(68)や、時代こそ違え歴史劇の『バリー・リンドン』(75)につながったのではないかという気がする。そして、この映画はクールなキューブリックが撮った唯一のメロドラマとして捉えることもできる。事実、カークとジーン・シモンズのラブシーンは切なく美しい。

 また、この映画はハリウッド製スペクタクル史劇の最後の輝く一作であり、憎々しいローレンス・オリビエとひょうひょうとしたチャールズ・ロートンの大勝負、ピーター・ユスチノフの味わい深い演技、トニー・カーティス、ウッディ・ストロードほか見事な脇役たち…といった、今は望むべくもないヘビー級の俳優たちの演技合戦が見られる。

 ダルトン・トランボの骨太な脚本、ラッセル・メティの素晴らしいカメラワーク、アレックス・ノースの甘美なメロディ、ソール・バスの印象的なタイトルデザインと、一級品のスタッフたちの仕事にも酔わされる。

 見る前は、再見だし、時間は長いし…などと思っていたのだから、こうした思いが浮かんできたのはうれしい誤算。やはりこの手の映画は、映画館できちんと見てから評価すべきものだと思った。





【今の一言】赤狩りで迫害されたダルトン・トランボにとって、この映画のスパルタカスは自身の反映であり、ローマ帝国は赤狩りに加担した権力側の人々の反映だったのかもしれないと思う。

パンフレット(68・東宝事業部)の主な内容
原作者のことば/カーク・ダグラス/解説/物語/ジーン・シモンズ/この映画の監督スタンリー・カブリック/ローレンス・オリビエ/製作メモ/チャールズ・ロートン、ピーター・ユスチノフ、ジョン・ギャビン、ウッディ・ストロード、トニー・カーチス/スタンリー・カブリックと「スパルタカス」(岡俊雄)

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