『ジョン・ウィック:パラベラム』(19)(2019.9.10.アスミックエース試写室)
第1作の『ジョン・ウィック』(14)では、愛犬を殺された怒りからロシアン・マフィアを壊滅させ、第2作の『ジョン・ウィック:チャプター2』(17)では、家を爆破された怒りからイタリアン・マフィアを壊滅させた、伝説の殺し屋ジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)。
今回は組織から追われる身となり、さまざまな刺客と壮絶な闘いを繰り広げる。『ミッション:インポッシブル』シリーズのトム・クルーズ=イーサン・ハントも真っ青の、50男キアヌによるノンストップアクションに口あんぐり。すご過ぎて思わず笑ってしまうほどだ。
ただ、イーサンにはとりあえずスパイとしての正義や大義らしきものがあるから、闘いの理由や、必死に生き残ろうとする理由も分かるのだが、ウィックの場合は、己が生き残るためにひたすら相手を殺しまくる。この男の生への激しい執着は一体どこから生じるのだろうと思わされるし、あまり感情移入できないところがある。
ただ、これまでに比べると、イアン・マクシェーン、ランス・レディックに加えて、ハル・ベリー、アンジェリカ・ヒューストン、ローレンス・フィッシュバーン、マーク・ダカスコスらを配すなど、ウィックを囲む脇役たちの扱い方には工夫の跡が見られた。
バトルシーンは、馬や犬との共闘のほか、例えば、長身のバスケットボール選手との闘いは『死亡遊戯』(78)、ガラスの部屋でのダカスコスらとの対決は『燃えよドラゴン』(73)といった具合に、ブルース・リーの影響が強いと感じたし、馬上アクションは千葉真一の『戦国自衛隊』(79)や「影の軍団」をほうふつとさせる。
上映後、アクション映画好きの知人が「このシリーズを見ると、キアヌが『デス・ウィッシュ』シリーズのチャールズ・ブロンソン化しているように思える」と語っていた。なるほど。そう思えなくもないか。
『ジョン・ウィック』