『続・男はつらいよ』(69)(2009.8.14.)
寅さんの故郷である葛飾・柴又の隣の金町に引っ越してきた記念と、先日訪れた「JAZZ IN BLUE」という店が、この映画のロケに使われたことを確かめるために再見。
この映画は、男はつらいよ版の「瞼の母」で、寅(渥美清)と母親のお菊(ミヤコ蝶々)との掛け合いが楽しめる。特にラストシーンが絶品。『こち亀』もそうだが、遠くから眺めていた景色が身近なものになると映画やドラマを見る目が変わることを発見した。
佐藤オリエが演じたマドンナの夏子が本当にきれいでかわいくて魅力的。その父で、寅が中退した葛飾商業時代の恩師、坪内散歩先生(東野英治郎)の無骨さもいい。
中でも散歩先生が寅に言う「お前なんかより少し頭がいいばっかりに、お前なんかの何倍もの悪いことをするやつがうじゃうじゃいることだ。こいつは許せん。実に許せんバカモノどもだ」というセリフがしみる。寅はこの映画の時は38歳という設定だったことを今回発見した。
寅が山崎努の医者に向かって吐く「おっ、てめぇさしずめインテリだな」も意味不明の名セリフ。そして名セリフの白眉は、一度はけんか別れした寅とお菊が一緒にいるのを目撃した夏子が亡き父に語り掛ける、ラストシーンのこの一言。
「お父さん、寅ちゃんは、お母さんに会っていたのよ。そうなのよ、やっぱりそうだったのよ。お父さん。お父さんがどんな顔をするか見てみたいわ。でも…もう、そのお父さんはいないのね…」。『男はつらいよ』シリーズはまさに名セリフの宝庫だ。