『男はつらいよ 寅次郎忘れな草』(73)(1980.5.9.ゴールデン洋画劇場)
こんなにも人の心を平和にし、楽しくさせ、ほのぼのとさせるこのシリーズは、日本映画の中でも特別なものに値する。話の中心は、毎回寅さんが恋して失恋するだけなのだが、その中に、周囲の人々やマドンナのドラマといったさまざまなエピソードを加えて、一作一作を全く飽きることなく見せる。
今回のリリー(浅丘ルリ子)との恋の間にも、旅芸人や行商人の哀感や、北海道の酪農一家の様子(織本順吉好演)、地方から出てきた若い労働者の恋などを巧みに描き込んでいる。たとえマンネリと言われようが、まだまだ作り続けてほしい。このシリーズを見て気持ちが明るくなる人がたくさんいるのだろうから。
松村達雄のおいちゃんもなかなか良かったが、例の「ばかだねえ」のセリフは、やっぱり森川信が最高だった。