『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(76)(1984.4.10.月曜ロードショー)
(1994.5.)
飲み屋で貧相な老人と意気投合した寅次郎。実はその老人は日本画の巨匠・池ノ内青観だった。2人は兵庫で再会するが、寅は地元の美人芸者ぼたんに一目惚れする。
『男はつらいよ』シリーズ史上、この映画が最もフランク・キャプラの映画を感じさせる、という話を耳にしたので、久しぶりに見てみた。確かに、ラストで宇野重吉扮する青観が示す心意気が生む奇跡は、甚だキャプラっぽいと言えるかもしれない。
今回は、物故者の多さに愕然とさせられた。思えば20年前の映画だものなあ。中でも、粋な芸者のぼたんを演じた太地喜和子は、マドンナの中で唯一の物故者になってしまった。ぼたんは、リリー(浅丘ルリ子)とともに、寅と一緒になれる可能性を感じさせるキャラクターとして忘れ難い。時折、三橋美智也の「星屑の街」をほうふつとさせる、山本直純作曲の「ぼたんのテーマ」も、ぼたんのキャラクターとよく合っていた。
播州・龍野から東京の青観に向って合掌する寅とぼたんの姿は、通常とは一味違う、名ラストシーンとして記憶に残る。