田中雄二の「映画の王様」

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『モダン・タイムス』

2019-09-06 13:20:27 | 映画いろいろ
 先日、試写である映画を見たらチャップリンのこの『モダン・タイムス』が映り、「スマイル」が流れた。

『モダン・タイムス』(36)(1981.7.29.)
 
   

 何度見ても、その動きや表情に笑わされてしまう。そして、現代にも通じる、機械に支配された人間たちの姿をすでに50年前に予見していた先見の明には驚かされてしまう。
 
 この映画はチャップリンの映画歴の中では分岐点を示すものだ。あくまでサイレント一本槍だった彼が「ティティナ」を歌うワンシーンだけとはいえ、トーキーを用いた。また、ユーモアとペーソスに加えて、機械や権力に対する怒りを露わにしている。そしてトレードマークのドタ靴、ちょび髭、山高帽というスタイルも、これが最後になった。
 
 チャップリンはこの映画以降、自分の映画に怒りや思想を入れ込んでいく。それは『独裁者』(40)『殺人狂時代』(47)で頂点を迎え、最後は『ライムライト』(52)で枯淡の境地にたどり着く。だから、この映画は、サイレントからトーキーへと変化した映画史上からも、映画作家チャップリンの変遷を知る上でも、重要な作品だと言える。それにしても、あのラストシーンはやっぱり名場面だ。
 
(1993.6.)
 リチャード・アッテンボロー監督、ロバート・ダウニーJr.主演のチャップリンの伝記映画『チャーリー』(93)を見たら、久しぶりに“本物”が見たくなった。今回新たに発見したのは、以前よりもチャップリンが老けて見えたことであった。アップの時の顔のしわなどは見るからに中年男のそれであり、相手役のポーレット・ゴダードが当時二十歳そこそこだったことを考え合わせると、これは明らかに年の離れたカップルの物語だったのである。これに『独裁者』での再びのポーレット、そして『ライムライト』のクレア・ブルームが続く。つまり、チャップリンは己のロリータコンプレックスを、自分の映画の中で露呈していたのだ。
 
『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』より
 
   
 
名画投球術 No.9「(食欲の秋)食欲増進作用のある映画を観たい」チャールズ・チャップリン
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8e7c815c961600dfe685f21a151c1858
 
 パンフレット(54・新世界出版社(AMERICAN MOVIE WEEKLY))の主な内容
モダン・タイムスの再公開に当たって、ストーリイ、甦えるモダン・タイムス(荻昌弘)、チャップリンの偉大さ(山本恭子)、チャップリン歌う踊る、ポーレット・ゴダード
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