田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『推理・SF映画史』『是馬、荒馬』『ホック氏』シリーズ…(加納一朗)

2019-09-03 11:40:53 | ブックレビュー
 作家の加納一朗氏が亡くなった。
 
   
 
 小学生の頃、少年マガジンに連載されていた『怪盗ラレロ』(ドラマ化され青空はるお・あきおが出ていた)で氏の小説と初対面。映画に狂い始めた中学生の頃、図書館で氏の労作『推理・SF映画史』を発見して、以後貴重な資料として愛蔵した思い出もある。氏には映画マニアとしての顔もあった。
 
 そして、朝日ソノラマ文庫のユーモアSF『是馬、荒馬』シリーズ、シャーロック・ホームズのパスティーシュ『ホック氏』シリーズ、港南署を舞台にした警察物、迷探偵ものの『殺人珍道中』シリーズ、明治を舞台にした『開化殺人帖』シリーズ、昭和初期を舞台にした『浅草ロック殺人事件』『特急“あじあ"殺人行』『死霊の王国』『デスレス 奴等は死なない』などのSFホラーと、恐らく氏の小説のほとんどに目を通していると思う。ちなみに氏は「スーパージェッター」の主題歌の作詞と脚本にもかかわっている。
 
 氏の功績は『荒馬、是馬』シリーズのようなジュブナイル(ジュニア向け)小説と、ハードな大人のSFや推理物を書き分けたところ。シリーズ物が多く、多作の割には、SF同人誌『宇宙塵』仲間の小松左京、筒井康隆、星新一、光瀬龍、広瀬正、平井和正、眉村卓などと比べると、“知る人ぞ知る”ような存在だが、オレのようなある種マニアックなファンも決して少なくはないと思う。お世話になりました。
 
だからこんなサイトもある
http://ara-kore.appspot.com/htdocs/index.html
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『荒野のガンマン』

2019-09-03 10:22:43 | 映画いろいろ
『荒野のガンマン』(61)
 
  
 
 決して帽子を脱がず、古傷のためにまともに銃が撃てないイエローレッグ(ブライアン・キース)と、彼に息子を誤殺された踊り子のキット(モーリン・オハラ)、実はイエローレッグが復讐の機会を狙う元南軍兵士のターク(チル・ウィリス)、その弟分でキットに惚れているビリー(スティーブ・コクラン)が、キットの息子を埋葬するための旅に出る。その中に、イエローレッグのトラウマと贖罪、仲間割れ、イエローレッグとキットの恋、インディアンの襲撃などが盛り込まれる。
 
 サム・ペキンパーの監督デビュー作だが、稚拙な演出が目立ち、あくまでも、ちょいとユニークなB級西部劇といった類のもの。異色は数々のジョン・フォードの映画でヒロインを務めたオハラが、汚れ役とも思えるような役を体当たりで演じて、セクシーな魅力すら発散させているところだが、実はこの映画は彼女の弟がプロデュースしたので、彼女が頑張らざるを得なかったということらしい。とは言え、フォード映画とは違った、崩れた熟女の魅力を感じさせて、なかなかいい。当時の彼女は40歳ぐらいか。
 
 ペキンパーはいわゆる“雇われ監督”で、この映画を気に入らなかったようだが、後のペキンパー一家のスリム・ピケンズとストロザー・マーティンがすでにこの映画に顔を出しているのに加えて、例えば、戦えない主人公、ヒロインは酒場女(水浴シーンもある)、何年越しかの復讐の空しさなど、後年の『砂漠の流れ者』(70)に通じる要素が多々あるのが面白い。また、トラウマを抱えた主人公というのもニューシネマにつながるものがある。「ジョニーが凱旋するとき」などを使ったマーリン・スカイルズの音楽もユニークで耳に残る。
 
 
『サム・ペキンパー 情熱と美学』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/96a0cab264ba3d53e14786426865d915
 
 
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