『男はつらいよ 寅次郎真実一路』(84)(2006.10.19.)
『男はつらいよ 寅次郎真実一路』を再見。やはりこの時期は低迷期なのだが、今の日本映画が失った軽妙な語り口や情緒には見るべきところがある。
もともとこのシリーズの根底にはチャップリンの放浪紳士や、無法松の影響があるのだが、本作は米倉斉加年の蒸発するエリートサラリーマンの姿や、大原麗子扮するその妻への寅の態度、ラストシーンの『モダン・タイムス』(36)(というよりルネ・クレールの『自由を我等に』(31)か)風の、今は亡き寅(渥美清)とポン州(関敬六)の姿に、いつにも増して“チャップリンや無法松”の色が強く感じられた。
冒頭の夢に松竹唯一の怪獣映画『宇宙怪獣ギララ』(67)が登場するのが楽しい。