『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』(82)(1982.9.25.川崎国際 併映は『道頓堀川』『えきすとら』)
最近は、シリーズの終わりを感じながら見るようになっている。その間、最後まで見続けることが、このシリーズへのささやかな恩返しだと思って見続けているのだが、製作側の無理やあがきを感じることは否めない。
『~かもめ歌』では寅さんを保護者のように描き、『浪花の恋~』ではマドンナに恨み言を言う始末。そして今回は、あろうことか、いしだあゆみ演じるマドンナに惚れられてしまうのである。
シリーズのパターンは、寅さんが美女に惚れることによって生じるおかしさや悲しさ、切なさを描くことだったのに、寅さんが惚れられてしまっては、ただただどきまぎしてしまう彼を見るつらさを感じさせられて困ってしまう。かつて『~夢枕』で、八千草薫のマドンナに惚れられたことはあったが、あの時は寅さんも若かった。今は年を取って、何か切羽詰まったものを感じさせられてしまうのである。
確かに、盆と正月という1年に2本のペースでこれだけのシリーズ映画を作ってしまうのは驚くべきことなのだけれど、そろそろだな、という思いは抑え切れない。何たって、始まった時は赤ん坊だった満男が、今は寅さんを見て悲しさを感じる年頃になってしまったのだから…。
(2006.9.4.)
NHK BSで『男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋』を再見。珍しく生々しさのある一編で、全体のトーンも暗い。この時期のシリーズはちょっと落ち込んでいた気がするし、寅さんの恋に満男(吉岡秀隆)を絡めるあたりにシリーズ継続への試行錯誤が見えるところもある。