『男はつらいよ 寅次郎春の夢』(79)(1980.10.8.早稲田松竹)
寅さんも随分とインターナショナルになったものだ。というよりも、ネタ不足ということなのか。脚本にレナード・シュレイダー、ゲストにハーブ・エデルマンという、『ザ・ヤクザ』(74)を思い起こさせる2人を迎え、これまでとは一風変わった映画にしようと試みたのだろうが、結果は必ずしも成功しているとは言えなかった。
それはこのシリーズの根底に流れる人情の世界は、やはり日本人特有のものだからだろう。劇中でも、アメリカ人はものをはっきりと言うが、日本人は互いの気持ちを察し合って、あまりはっきりとものを言わない、というシーンがあった。
寅さんの恋の場合は後者の典型だろう。ところが、エデルマン演じるマイク・ジョーダンなるアメリカ人があまりにも日本的過ぎて、人が良過ぎて、かなわぬ恋と知りながらさくらに恋してしまったりと、まるで寅さんと同じなのである。彼をもっとアメリカ人の典型として描いたならば、もっと面白くなったのでは、という気がした。
名セリフ「もう1時間もたったのに、時計は5分しかたってねえや」(寅)