田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『男はつらいよ 寅次郎恋歌』

2019-09-15 14:07:34 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 寅次郎恋歌』(71)(1979.4.15.東京12チャンネル)


 シリーズ第8作。マドンナは柴又で喫茶店を開いた未亡人・貴子(池内淳子)。
 
 この映画は寅の恋というメインストーリーはもとより、妻を亡くした博(前田吟)の父・飈一郎(志村喬)が寅にしみじみと聞かせる「りんどうの咲く家の話」と、この後たびたび登場することになる旅芸人・坂東鶴八郎(吉田義夫)一座との交流というサイドストーリーが秀逸。2人の名優が実にいい芝居を見せるのだ。
 
 そしてラストで、現実逃避として旅人=寅に憧れる貴子の心を知って、「そんなにいいもんじゃねぇんですけどねえ」と失望する寅の姿が切なく映る。
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『男はつらいよ純情篇』

2019-09-15 07:55:03 | 男はつらいよ
『男はつらいよ純情篇』(71)(1978.11.1.水曜ロードショー)


 シリーズ第6作。マドンナは亭主とうまくいかず、寅屋に下宿した若尾文子。前半は渥美清と森繁久彌の掛け合い芝居が楽しめる。とは言え、この映画の白眉はラストの寅とさくらの柴又駅での別れのシーンだ。
 
 ホームに電車が入線し、乗り込む寅。発車間際にさくらに向って「故郷ってやつは…故郷ってやつはよ…」と言ったところでドアが閉まる。さくらは「お兄ちゃん、今何て言ったの」と聞くが、すでに電車は動き出してしまった。観客も寅が何を言いたかったのか分からないままなのだが、それが余韻となってかえって切なく心に残る。このシリーズの大きなテーマの一つである「故郷とは?」が色濃く出た作品だ。
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『男はつらいよ 柴又慕情』 『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』

2019-09-15 07:07:28 | 男はつらいよ
『男はつらいよ 柴又慕情』(72)(1972.8.荏原武蔵野館)『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(1974.8.27.荏原武蔵野館)

 

 子供の頃、近所の武蔵小山に荏原武蔵野館という邦画専門の映画館があった。ここで東宝の『ゴジラ』シリーズや大映の『ガメラ』シリーズや『大魔神』シリーズ、そして学校行事で『日本万国博』(71)などを見たのだが、実は『男はつらいよ』シリーズを初めて見たのもここだった。
 
 それは、吉永小百合演じる歌子がマドンナとなったシリーズ第9作『男はつらいよ 柴又慕情』(72)で、併映はドリフターズの『祭りだお化けだ全員集合!!』だった。森川信の死去によって、この映画から松村達雄が2代目のおいちゃんとして登場し、歌子の父親の小説家を宮口精二が演じた。
 
 また、くしくも荏原武蔵野館でのラストショーとなったのが、吉永が再登場した、シリーズ13作目の『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』(74)。同時上映は同じくドリフの『超能力だよ全員集合!!』だった。
 
 そして『柴又慕情』では大学生だった歌子が、わずか2年後の『寅次郎恋やつれ』では結婚後、夫と死別している。自分自身も小学生から中学生になり、全く環境が変わっていた。
 
 という訳で、初めて寅さん映画を見た映画館のラストショーが寅さん映画になり、マドンナはどちらも吉永小百合と、偶然が重なった。だから、この2本は映画以外の部分でとても印象に残っているのだ。
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