母の死と時を同じくして、田中邦衛の訃報が流れた。演技のくささを個性にまで昇華させた希有な俳優の一人だ。
『若大将』シリーズ(61~)のライバル青大将の石山のほか、『網走番外地』(65~)、『仁義なき戦い』(73~)など、いわゆるシリーズ物での活躍、あるいは『冬の華』(78)『居酒屋兆治』(83)といった高倉健との共演作、ほかにも、黒澤明、岡本喜八、山田洋次監督作などで印象深い演技を披露した。
個人的に好きなのは、『悪い奴ほどよく眠る』(60)セリフのない殺し屋、『男はつらいよ 奮闘篇』(71)の地方の教師、『ダイナマイトどんどん』(78)の酒仙投手・芦刈の作蔵、『息子』(91)のタキさん、『学校』(93)のイノさん、そして、テレビドラマ「北の国から」(81~)の黒板五郎、「砂の器」(91)の今西刑事…。
番外では、『ルパン三世念力珍作戦』(74)の次元大介、『金田一耕助の冒険』(79)の等々力警部、そして『みんなのいえ』(01)の大工の棟梁なども忘れ難い。
でも、これ一本となると、やはり『学校』のイノさんか「北の国から」の黒板五郎になるのだろうか。