NHKドラマ「流行感冒」
小説家の私(本木雅弘)は、妻の春子(安藤サクラ)と4歳の娘の左枝子、2人の女中と共に暮らしていたが、最初の娘を病気で亡くしたため、左枝子の健康については臆病なほど神経質だった。
大正7年(1918)秋。流行感冒(スペイン風邪)がはやり、感染者が増え始める中、女中の石(古川琴音)が、村人が大勢集まる旅役者の芝居興行を見に行ったのではないかという疑惑が浮上する。
感冒が流行する中、理性を失い、無闇に人間不信に陥った主人公が、人への信頼を取り戻していく姿を描く。
このドラマの原作である志賀直哉の短編「流行感冒」(新潮文庫『小僧の神様・城の崎にて』所収)は、昔読んだのだが、その存在をすっかり忘れていた。そして、ドラマを見ながら、確かに、今のコロナ禍と符合するする話だと思い、読み直してみると、短編小説の名手と呼ばれる志賀直哉の本領を改めて知ることができた。