『時をかける少女』2010(2010.12.25.)
久し振りに“土曜日の実験室”
筒井康隆原作、大林宣彦監督の1983年版の続編とも呼ぶべき一編。久し振りの“土曜日の実験室”である。それにしてもNHKの少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」(72)に始まり、芳山くんはいつまでタイムトラベルをさせられるのだろうか。
今回は、原作の主人公・芳山和子(安田成美)の一人娘で女子高生のあかり(06年のアニメ映画版でヒロインの声を演じた仲里依紗)が、交通事故で昏睡状態に陥った母の頼みで、母の初恋の相手・深町一夫に会うために1974年へタイムリープし、そこで出会ったSFオタクで映画監督志望の大学生(中尾明慶)との間に淡い恋が芽生える。
現代の女子高生役の仲と当時の大学生役の中尾の対比が結構面白く描かれているが、母娘2代にまたがる結ばれない恋の切なさがこの映画のポイント。ただ、所詮映画なのだから、タイムトラベルのルールにこだわらずに、ハッピーエンドにすることもできたはずなのに…と思った。そのうち母娘孫の3代にまたがる話が出てくるかもしれない。
ところで、74年といえば自分は中学2年生で、本気で映画を見始めたころ。というわけで、懐かしさを感じる半面、登場する小道具や背景に思わず「違うぞ」と突っ込みを入れたくなるところもあったのだが、同時代を描いた『20世紀少年』のような“嫌な感じ”は浮かんでこなかった。
それは、この映画の谷口正晃監督や脚本の菅野友恵をはじめとするスタッフたちが、素直に8ミリ映画の製作や大林版への敬意を込めていたからだろう。ただし、74年を前後で挟む現代の描写がいささか稚拙で、トータルとしては傑作と呼べないところが残念だった。
『時をかける少女』スペシャルトークを取材(2010.4.15.:新宿ピカデリー)
出席者は1983年版の大林宣彦監督と本作の谷口正晃監督、そして脚本を担当した菅野友恵。大林監督は今回の映画を気に入ったようで、短い時間ながら、相変わらずの大林節がさく裂した。
【今の一言】中尾明慶と仲里依紗は、この映画が縁で後に結婚した。