『レキシントンの幽霊』村上春樹(文春文庫)
(2004.12.12.)
『トニー滝谷』(04)の市川準監督へのインタビュー取材が決まった。急な話でちょっと戸惑うが、とりあえず、準備のために原作短編が収録されている村上春樹の『レキシントンの幽霊』を読んでみる。元々、村上春樹は苦手なので、どうかな?という思いは読む前からあったのだが…。この短編もいかにも彼独特の曖昧さに満ちたもので、ちょっと受け入れ難い。正直なところ、「これの映画化か、まいったなあ」という感じがした。
【インタビュー】『トニー滝谷』市川準監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/84b13d3bfb9242b59a7c1427ac35da53
『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎(祥伝社)
(2006.5.18.)
伊坂幸太郎の小説を映画化した『陽気なギャングが地球を回す』(06)の前田哲監督にインタビュー取材。ということで、映画を見て、原作を読んでといろいろと予習を。
結果的には原作の面白さを消化しきれなかった映画という気がするが、誰も死なない犯罪コメディー映画として『ホット・ロック』(72)を想起させるところなどにちょっぴりシンパシーも感じる。それにしてもこの原作は面白い。仕事抜きで続編の『陽気なギャングの日常と襲撃』を読み始めてしまった。
【インタビュー】『陽気なギャングが地球を回す』前田哲監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51b939c50275e81e74259f8982a9e071
【インタビュー】『春との旅』小林政広監督
(2010.4.8.)
『春との旅』(10)の小林政広監督にインタビュー取材。映画の内容から、もっと尖った人かと勝手に思っていたのだが、実際に面と向かって話してみると、とてもソフトな感じで、この人も筋金入りの映画ファンなんだなあと感じるところが多々あった。
今回の『春との旅』は小津安二郎の『東京物語』(53)やジュゼッペ・トルナトーレの『みんな元気』(90)をほうふつとさせる家族の問題を絡めたロードムービーだが、祖父(仲代達矢)と孫娘(徳永えり)の旅という点がユニーク。仲代が絶品の演技を見せるが、ほかにも大滝秀治、菅井きん、淡島千景ら大ベテランが健在ぶりを示したところも魅力のひとつ。脚本家出身の監督らしく含蓄のあるセリフも多かった。
『映画監督小林政広の日記』(キネマ旬報社)
(2010.4.16.)
『春との旅』のインタビュー取材の際に頂いた『映画監督小林政広の日記』を読了。映画を作りながら、あるいは日々の生活の中から湧き上がってくる、ぼやき、怒り、嘆き、悲しみ、喜びが正直につづられていて面白かった。自分も含めて、ものを表現しようとする人間は、どんな状況下でも、それを客観的に眺めているもうひとりの自分がいるということか。小林作品常連の香川照之のあとがきが秀逸だった。