田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

取材関連『レキシントンの幽霊』『陽気なギャングが地球を回す』『映画監督小林政広の日記』

2022-02-01 23:42:26 | ブックレビュー

『レキシントンの幽霊』村上春樹(文春文庫)
(2004.12.12.)

 『トニー滝谷』(04)の市川準監督へのインタビュー取材が決まった。急な話でちょっと戸惑うが、とりあえず、準備のために原作短編が収録されている村上春樹の『レキシントンの幽霊』を読んでみる。元々、村上春樹は苦手なので、どうかな?という思いは読む前からあったのだが…。この短編もいかにも彼独特の曖昧さに満ちたもので、ちょっと受け入れ難い。正直なところ、「これの映画化か、まいったなあ」という感じがした。

【インタビュー】『トニー滝谷』市川準監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/84b13d3bfb9242b59a7c1427ac35da53


 

『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎(祥伝社)
(2006.5.18.)


 伊坂幸太郎の小説を映画化した『陽気なギャングが地球を回す』(06)の前田哲監督にインタビュー取材。ということで、映画を見て、原作を読んでといろいろと予習を。

 結果的には原作の面白さを消化しきれなかった映画という気がするが、誰も死なない犯罪コメディー映画として『ホット・ロック』(72)を想起させるところなどにちょっぴりシンパシーも感じる。それにしてもこの原作は面白い。仕事抜きで続編の『陽気なギャングの日常と襲撃』を読み始めてしまった。

【インタビュー】『陽気なギャングが地球を回す』前田哲監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/51b939c50275e81e74259f8982a9e071


【インタビュー】『春との旅』小林政広監督
(2010.4.8.)

 『春との旅』(10)の小林政広監督にインタビュー取材。映画の内容から、もっと尖った人かと勝手に思っていたのだが、実際に面と向かって話してみると、とてもソフトな感じで、この人も筋金入りの映画ファンなんだなあと感じるところが多々あった。

 今回の『春との旅』は小津安二郎の『東京物語』(53)やジュゼッペ・トルナトーレの『みんな元気』(90)をほうふつとさせる家族の問題を絡めたロードムービーだが、祖父(仲代達矢)と孫娘(徳永えり)の旅という点がユニーク。仲代が絶品の演技を見せるが、ほかにも大滝秀治、菅井きん、淡島千景ら大ベテランが健在ぶりを示したところも魅力のひとつ。脚本家出身の監督らしく含蓄のあるセリフも多かった。

『映画監督小林政広の日記』(キネマ旬報社)
(2010.4.16.)

 
 『春との旅』のインタビュー取材の際に頂いた『映画監督小林政広の日記』を読了。映画を作りながら、あるいは日々の生活の中から湧き上がってくる、ぼやき、怒り、嘆き、悲しみ、喜びが正直につづられていて面白かった。自分も含めて、ものを表現しようとする人間は、どんな状況下でも、それを客観的に眺めているもうひとりの自分がいるということか。小林作品常連の香川照之のあとがきが秀逸だった。

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『淀川長治の遺言』『映画少年・淀川長治』(荒井魏)

2022-02-01 16:26:48 | ブックレビュー

『淀川長治の遺言』荒井魏(岩波書店)
(2006.3.27.)

 旧知の荒井魏氏著の本書を見つけたので熟読。著者の荒井氏やわが師匠で映画ジャーナリストの長谷川正とともに、淀川さんへのインタビューを編集したムック本製作に携わった日々が懐かしくよみがえった。決して金では買えない貴重な体験をさせていただいたと、今になってつくづく思う。


『映画少年・淀川長治』荒井魏(岩波ジュニア新書)
(2006.4.23.)

 交通博物館が閉館するということで、久々に来館したが、あまりの人の多さに入るのをやめた。というわけで、近くのちょっとしたグルメスポットになっている「やぶそば」で天ぷらそばを食べ、「竹むら」で揚げまんじゅうを食べて、神保町で古本屋をひやかして帰ってきた。

 そこで見つけた旧知の荒井魏氏の本書を読む。チャップリンや名作映画については、著者と一緒にたくさんの話を聞くことができたが、この本には「右手のない少年の話」など、自分が聞いていないものも含まれていたので、なかなか興味深かった。ジュニア向けの平易な文章が好ましく一気に読了した。


『淀川長治の証言』


https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1b90f2a7d3da72c38d9332f11b50328

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『汽車 映画ノスタルジア』(三木宮彦・畑暉夫・佐々木徹男)

2022-02-01 14:15:28 | ブックレビュー

『汽車 映画ノスタルジア』(展望社)
(2005.2.9.)

 以前、仕事でご一緒した大先輩の畑暉男さんから著書の案内が来た。その名も『汽車 映画ノスタルジア』。映画の中に登場した汽車を網羅したものらしい。

 ただ、畑さんのかつての労作『映画は汽車で始まった』『THE WESTERN』西部劇大全集 <シネアルバム 75>(芳賀書店)も、師匠・長谷川正の著書『映画狂室』(主婦と生活社)、『聖林画報』(人物往来社)も、皆絶版=古書となって安価で売られているのを知って何だか切なくなった。

【今の一言】その畑暉男さんが、昨年亡くなっていたことを先日知らされた。“映画の記録魔”的なところがあり、映画史家を名乗った畑さんには、旧作についての事実確認や、名鑑のリスト作りの際などには、大変お世話になったし、西部劇や鉄道ファンの大先輩として、貴重な話も聞かせていただいた。

 自分と西部劇の同好会「ウエスタン・ユニオン」との橋渡しをしてくださったのも畑さんだった。淀川長治先生、師匠の長谷川正に続いて、遂に畑さんも逝ってしまわれたかと思うと、とても寂しい気分になった。

 

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ビデオ通話で西部劇談議『シャラコ』

2022-02-01 08:39:27 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 今回のお題はエドワード・ドミトリク監督、ショーン・コネリー、ブリジット・バルドー共演のイギリス製西部劇『シャラコ』(68)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/61146680d303d0e4f12756578e287582

 コネリーはじめ、西部劇が似合わないヨーロッパの俳優たちが出演した珍品だが、意外にもメンバーの受けは悪くなかった。

 で、このバルドーのほかにも、例えば、ソフィア・ローレンは『西部に賭ける女』(60)、クラウディア・カルディナーレは『プロフェッショナル』(66)『ウエスタン』(68)、ジャンヌ・モローは『モンテ・ウォルシュ』(70)といった具合に、フランスやイタリアの女優たちが西部劇に出たが、どれも成功したとはいえず、散発的なもので終わっている。

 強いて言えば、『ウエスタン』のカルディナーレはよかったが、あれはもともとマカロニ寄りの映画だ。バルドーとカルディナーレが共演した『華麗なる対決』(71)という、伊仏合作のヨーロッパ製西部劇もあった。

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「BSシネマ」『ハチ公物語』

2022-02-01 07:00:56 | ブラウン管の映画館

『ハチ公物語』(87)(1987.12.28.)

 亡くなった主人(仲代達矢)の帰りを駅で待ち続け、渋谷駅のシンボルとなった忠犬ハチ公の有名な実話を映画化。監督・神山征二郎、脚本・新藤兼人。

 確かに、宣伝コピー通りの、語り継がれた美しい物語には違いない。だが、その半面、この映画は、人間の勝手な事情によって、ペットと呼ばれる動物たちの生活がいかに左右されるかを描いた、一種の動物残酷物語と言えないこともない。

 飼い主に懐くペットほどかわいいものはない。だが、それが双方にとって幸せなのかは分からない。この映画は、ハチを演じる犬の愛らしさ、けなげさを通して、そんな疑問を投げ掛ける。そのあたりが、最近流行の動物映画群とは一線を画していた。これは新藤兼人の脚本の力によるものだろうか。それ故、感動よりも、苦さの方を強く感じた。それにしても、子役と動物が主役の映画は、俳優たちは随分と苦労するのだろうなあ。

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