『大怪獣のあとしまつ』(2021.11.5.DVD試写)
人類を恐怖に陥れた巨大怪獣が、ある日突然死んだ。国民が歓喜に沸く一方、残された死体は徐々に腐敗・膨張が進んでいく。このままでは爆発し、一大事を招いてしまう。そんな状況下で死体処理を任されたのは、軍でも警察でもなく、3年前に姿を消した特務隊員の帯刀アラタ(山田涼介)だった。
怪獣の死体処理を題材に描くというアイデアは、例えば、大江健三郎の『破壊者ウルトラマン』や、『ウルトラマン研究序説』を思い起こさせるものがあり、なかなか面白い。
ところが、三木聡監督は、コメディなのか、ポリティカルフィクションなのか、ヒーローものなのか、はっきりさせない。一体どうしたいのかが見えてこないから、見る側はリアクションの仕方が分からず、途方に暮れる羽目になる。
総理大臣(西田敏行)を筆頭とするディフォルメされた閣議の様子などは、『シン・ゴジラ』(16)の出来の悪いパロディのようにも見える。
怪獣の死体処理が震災やコロナ禍にまつわる諸々とが微妙にリンクすることで、図らずも今日的なテーマを持った映画となったはずなのに、全体としては甚だ締まらず、ギャグも空回りし、散漫な印象を持たされる。一人で酔うのは三木監督の悪い癖。これは一種カルト的なボム映画の類いに入るかもしれない。松竹と東映初の合作としては何ともお粗末だ。
【インタビュー】『大怪獣のあとしまつ』山田涼介、土屋太鳳
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5189aa51415c95c95bb736eb1af4759a