田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『太泰の一番暑い日 ~映画監督・井上昭の93年~』

2022-02-26 06:50:53 | 映画いろいろ

 先頃、93歳で亡くなった井上昭監督の最後の作品となった『殺すな』の撮影現場に密着したドキュメンタリー。

 井上監督の作品は、大映時代の、いずれも市川雷蔵主演の『桃太郎侍』(63)『眠狂四郎多情剣』(66)『陸軍中野学校 密命』(67)『陸軍中野学校 開戦前夜』(68)をテレビで見たのみ。だから、映画を離れた後の、テレビ映画の監督というイメージの方が強い。

 93歳まで現役で、ボケもせず、しっかりと自分の足で歩いている姿を見ると、自分もこんな年の取り方をしたいと思わされた。

 また、このドキュメンタリーを見ていると、映画はたくさんの人々の力が結集して作られるものなのだと、改めて感じさせられた。雷蔵の“自撮り"エピソードが面白かった。

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『ガンパウダー・ミルクシェイク』

2022-02-26 06:34:06 | 新作映画を見てみた

『ガンパウダー・ミルクシェイク』(2022.2.24.オンライン試写)

 ネオンきらめくクライム・シティ。暗殺組織に所属するすご腕の殺し屋サム(カレン・ギラン)は、ターゲットの娘エミリー(クロエ・コールマン)をかくまったために組織を追われ、命を狙われることになる。

 サムは、かつて殺し屋だったマデリン(カーラ・グギーノ)、アナ・メイ(アンジェラ・バセット)、フローレンス(ミシェル・ヨー)が仕切る図書館に飛び込む。そこに行方不明だったサムの母スカーレット(レナ・ヘディ)も加わり、女たちはジェーン・オースティンやバージニア・ウルフの名を冠した武器を手に、組織との激しい戦いへと身を投じていく。

 監督・脚本はイスラエル出身の鬼才ナボット・パプシャド。赤を基調にしたポップで独特な色遣いが印象に残る。

 また、子どもをかくまう殺し屋という設定は『グロリア』(80)『レオン』(94)、ユーモアとバイオレンスを合体させたアクロバティックなアクションシーンは『キック・アス』(10)『キングスマン』シリーズ、女性グループ中心のアクション映画としては『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』(20)、そのほか、『レザボア・ドッグス』(92)『キル・ビル』(03)をはじめとするタランティーノの映画や、マカロニウエスタンからの影響も感じさせる。音楽も『続・夕陽のガンマン』(66)のエンニオ・モリコーネ風だ。

 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』公開時にマーゴット・ロビーにインタビューしたが、彼女は「例えば、この映画のような、女性のアンサンブルによるアクション映画は、キャメロン・ディアスたちの『チャーリーズ・エンジェル』(00)以来ではないでしょうか。女性のアンサンブルで痛快に悪をやっつけるというストーリーはほとんどないと思います。だから、女性たちが悪を負かすのを見るのは同性としては気持ちがいい。痛快なガールズアクションは見ている人の気分を高揚させてくれると思います」と語っていた。

 この映画もその系譜に連なるのだろうが、こうした映画を見ていつも思うことは、フェミニズムを主張するために、ここまで過激なバイオレンスシーンが必要なのか? それがかっこいいと思っているのならそれは勘違いなのではないか、ということである。

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