『城盗り秀吉』(講談社文庫)
(2004.9.20.)
この場合の“城盗り”は力攻めではなく、調略で城を奪うというもの。秀吉という人物は、天下人となるまでは、下賎の身から出世していく一種のすごろく人生で、庶民にとっては憧れであり、手本にもなる。なにより出世していく様が面白い。
だが、後半生は、朝鮮出兵、身内や家臣を切腹させるなど愚行が多く、その一生を描くと矛盾だらけになる。人間は向上を望むが、身分不相応まで出世すると逆に破滅するという典型がここにあると思うとちょっと悲しいものもある。
この小説は、秀吉の前半生から中盤、いわゆる旬の時代を、山の民という架空の存在をからめながら描いたもので、そんな矛盾をあまり感じずに読むことができた。まずまずの面白さ。