『ラーゲリより愛を込めて』(2022.11.8.東宝試写室)
(ネタバレあり)
第2次世界大戦終結後の1945年。ソ連軍によってシベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された日本人捕虜たちは、極寒の地で、わずかな食糧のみでの重労働を強いられ、命を落とす者が続出した。
そんな中、山本幡男(二宮和也)は、日本にいる妻・モジミ(北川景子)や子どもたちの下へ必ず帰れると信じ、周囲の人々を励まし続ける。やがて、山本の仲間思いの行動と力強い信念は、多くの捕虜たちの心に希望の火を灯していくが、彼自身は病に倒れる。
実在の日本人捕虜を主人公にした辺見じゅんのノンフィクション小説『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』を基に、瀬々敬久監督が映画化。ラーゲリでの山本の捕虜仲間を松坂桃李、中島健人、桐谷健太、安田顕らが演じる。
現在のウクライナ情勢を考えると、複雑な思いがする話。映画自体は普通の出来という感じだが、何かの場面やディテールからの連想で、別のことを思い出させられて、ふと涙が出たりする。年の性か、最近こういうことが増えた。
今回も、映画を見ながら、いろいろな過去の映画などのことが思い浮かんできた。
理不尽なシベリア抑留については、子どもの頃に見たアニメ「巨人の星」での、元巨人軍監督・水原茂のエピソードで初めて知った。くしくも、この映画にも収容所内での野球のシーンがあった。
極限状態の中でも(だからこそ)人は楽しみを見付けるという意味では、加東大介原作の『南の島に雪が降る』(65)の軍隊芝居にも通じるものがあると感じた。
劇中、山本が口ずさみ、やがて捕虜たちの間にも広がっていく歌が、なぜか「いとしのクレメンタイン」。これが市川崑の『ビルマの竪琴』(56・85)の「埴生の宿」的な役割を果たす。全体の語り部が副主人公(松坂)という点も『ビルマの竪琴』と同じで、「一緒に日本に帰ろう」というせりふもあった。
また、ラストの処理は、戦友たちから預かった遺書を、全国の遺族へ届け続けた男(渥美清)を描いた『あゝ声なき友よ』(72)や、最後に、死んだ戦友の代わりに彼の故郷を訪ねる男が登場するウィリアム・サローヤンの『人間喜劇』を思い出した。
これだけいろいろなことを思い出すということは、この映画が豊かだった証しなのか。ただ、作り手たちが、こうしたものを意識したのかどうかは分からない。全くの当て推量かもしれないが、ちょっと確かめてみたい気もする。
『プラチナデータ』(13)
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