田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「東急名画座(渋谷東急2)」2 『遠野物語』『おこんじょうるり』

2022-11-07 21:20:31 | 違いのわかる映画館

1983.3.17.『遠野物語』『おこんじょうるり』

『遠野物語』

 柳田国男の原作は、民族説話集であり、この映画で描かれた時代とは何の関係もないらしい。ということは、スタッフ(監督・ 村野鐵太郎、脚本・ 高山由紀子)は、昔話を近現代(明治末期)に置いてみることによって、“近現代の遠野物語”を作ることを試みたのだろう。

 しかも、これが今現在の遠野を舞台にして描かれたなら、全くの夢物語で終わってしまい、日本版のロミオとジュリエットのような男女の純愛話がしらけてしまったかもしれないが、時代を明治にすることで、違和感を少なくしている。

 そして、幻想的な伝説や、江波杏子演じる巫女の姿、あるいは仲代達矢の琵琶法師の世界と、階級差、貧富の差、戦争が引き起こす現実の悲劇を交差させることで、ただのファンタジックな純愛ものの域からも脱している。

 加えて、撮影が素晴らしい。駆け巡る白馬、満開の桜…。思えば、この映画で描かれた世界は、良きにつけ悪しきにつけ、何から何まで欧米化、近代化された今の日本が忘れてしまった、本来の日本の姿なのかもしれない。そこには、祈る、信じる、愛するといった、いちずな姿があった。

 とはいえ、この映画の場合は、どうこう言うよりも、映像から得た感動を素直に受け止めるべきものなのかもしれないとも感じた。

 原陽子、隆大介、役所広司は無名塾の出身。親方の仲代も出ているから、悪く取れば、七光りともなるのだろうが、実際、彼らはそれぞれ好演しているのだから、悪く言う筋合いはない。ここは素直に、彼らの才能を見い出した仲代の眼力に拍手を送ろう。


『おこんじょうるり』

 併映は、えらく評価の高い人形劇(監督・岡本忠成)。確かに、心温まるストーリー(人間=老婆と動物=キツネとのふれあい)であり、民族色にもたけた見事な人形アニメーションには違いない。

 ただ、今改めて「素晴らしい映画」だと声を大にして言うほどのものかという気もする。別にこの映画をおとしめるつもりはないが、この映画の世界は、テレビの「日本昔ばなし」や昔からの人形劇に登場するストーリーとあまり変わりはない気がするのだ。

 それが、今になって急に素晴らしいといわれ、芸術祭で大賞を取ってしまうとは、どうしたことなのだろう。お偉い人たちは、今までは、この手の話が持つ素晴らしさに気づかなかったのだろうか。


https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9c0d354e00deda66838af70ec925ae35

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『東京人』2022.12.特集「東京映画館クロニクル」

2022-11-07 15:23:42 | ブックレビュー

 『東京人』の最新号は「特集 東京映画館クロニクル なつかしの名画座から令和のミニシアターまで」
自分が、今はなくなった映画館の回顧をし始めた途端に、こんな特集が出るとは、うれしい偶然だ。

https://www.toshishuppan.co.jp/tokyojin

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「東急名画座(渋谷東急2)」1

2022-11-07 12:41:18 | 違いのわかる映画館

東急文化会館6階。2003年閉館。


1975.1.26.『チャップリンの伯爵夫人』

『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』から


1975.2.5.『招かれざる客』

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b576406d1b4d70083813ca88a945dddf


1977.4.17.『バリー・リンドン』

 ライアン・オニールがかつてない(これからもないかもしれない)名演を見せる。スタンリー・キューブリックの映画は、難解な点も多いが、映像は美しく、素晴らしい。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5393687851da7001f7c6e6ce72383012    
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/22417d2030f34dc895dd224ea4e5fb19


1977.5.14.『課外授業』

 イタリアお得意の筆下ろしもの。キャロル・ベイカーの色気にまいった。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/b5133358dcb3b5adb4fd824aaee9e7d2


1979.6.18.『エデンの東』

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/9ee4f61785e2ed260f2bc467849ef3ce


1980.10.2.『ヤング・ゼネレーション』

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/22c2d486890611803b0f0f678f7f54ef


1980.10.7.『チャイナ・シンドローム』


https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/92fd6480bb4958a9b21d8e592d2f7fcd


1981.6.11.『泥の河』


https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a0834ffebd53b836c9ba84d60393168a


1981.12.2.『嘆きの天使』

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6536407db746fd62e2d7b2fb922bfd47


 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ブラックアダム』ドウェイン・ジョンソン流ハリウッドを生き抜く5カ条

2022-11-07 07:01:25 | 仕事いろいろ

『ブラックアダム』

ドウェイン・ジョンソン流ハリウッドを生き抜く5カ条
「いい人間であることが一番大切」と語る、その意外な素顔とは
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1357650&preview=true

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする