田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『フラッグ・デイ 父を想う日』

2022-11-14 21:37:45 | 新作映画を見てみた

『フラッグ・デイ 父を想う日』(2022.11.14.オンライン試写)

 1992年、アメリカ最大級の偽札事件の犯人であるジョン・ボーゲルが、裁判を前にして逃亡した。ジョンは巨額の偽札を高度な技術で製造したが、それを知った娘のジェニファーは、父に対して複雑な思いを抱く。

 ジャーナリストのジェニファー・ボーゲル(彼女を受け入れ、ジャーナリストへの道を開いた大学が素晴らしい)が、2005年に発表した回顧録を原作に、愛する父が実は犯罪者だったと知った娘の葛藤と、切るに切れない家族の絆を、実話を基に描く。

 描かれる時代は、1975、81、85、92年だが、ジェニファーの回想ということで、あえて時系列を崩し、過去と現在を交錯させながら描いている。

 ショーン・ペンが初めて自身の監督作に出演し、ロビン・ライトとの間に産まれた娘のディランと息子のホッパーと親子役を演じた。そういう意味では、究極の家族映画とも言える。

 父の正体を知り、苦悩しながらも、弱さや矛盾に満ちた父に愛情を抱く娘をディランが熱演している。こういう家族共演の映画を見るたびに、一体どんな気持ちで演じているのだろうという興味が湧く。
 
 タイトルは、アメリカ国旗制定記念日のことで、この日はジョンの誕生日でもあるのだが、劇中で「フラッグ・デイに生まれた男はどうしょうもないダメ男」みたいなセリフもあった。

 いわゆる毒親、ダメ親父の話だが、このジョンという男、調子がよくてうそつきなのにどこか憎めない。変な話、『男はつらいよ』の寅さんを思わせるところがある。

 たとえ困りごとがあっても、切るに切れない家族という存在は、年を取るほど重くなる。「家族とはやっかいだけどいとおしい」、そして、悲劇と喜劇は常に紙一重だということ。これは山田洋次がずっと変わらずに語ってきたことだ。それがこの映画にも当てはまるところがあって、少々驚いた。

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「ザ・シネマ」『荒野の七人』4K

2022-11-14 11:04:09 | ブラウン管の映画館

 やっと4Kテレビが見られるようになった。それで、久しぶりに『荒野の七人』を4Kで見たら、画も音も格段によくて驚いた。この映画は、マックィーン演じるヴィンが語る、例え話が面白いのだが、今回の字幕は微妙に意味が違っていた。

「10階から落ちた奴がいて、そいつは1階ごとに『まだ大丈夫だ』って言いながら落ちていったんだとさ」
Reminds me of that fellow back home that fell off a ten story building.Well, as he was falling people on each floor kept hearing him say, "So far, so good." Tch... So far, so good!

「昔、裸でサボテンに飛び込んだ奴がいた。なぜだと聞いたら、その時はいい考えだと思ったんだとさ」
It's like a fellow I once knew in El Paso. One day, he just took all his clothes off and jumped in a mess of cactus. I asked him that same question, "Why?" He said, "It seemed to be a good idea at the time."

『荒野の七人』ミリッシュ・カンパニー
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/a728ce84e41c33880e0d9a24953de1ab

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『血と怒りの河』

2022-11-14 06:21:13 | 映画いろいろ

『血と怒りの河』(68)

 幼い頃に両親を亡くし、メキシコの盗賊の首領オルテガ(リカルド・モンタルバン)に育てられたブルー(テレンス・スタンプ)は、オルテガの指示の下、彼の息子たちと共に、国境の河向こうにある村を襲う。だが、ブルーは医師(カール・マルデン)の娘(ジョアナ・ペティット)を犯そうとしたオルテガの息子を射殺。そして逃亡中にけがを負い、医師父娘にかくまわれる。

 医師宅に住み着いたブルーは、迎えに来たオルテガを拒絶し、国境の河を挟んで彼と対決することになる。

 監督はイタリア系カナダ人のシルビオ・ナリッツァーノ、主演のスタンプとペティットはイギリス人、モンタルバンはメキシコ人、音楽のマノス・ハジキタスはギリシャ人、アクション監督はヤキマ・カヌットという、多国籍のスタッフによる、純正ともマカロニとも違う味わいを持った異色西部劇。

 国境を表す河を間に挟んで、アメリカ(テキサス)とメキシコの屈折した関係性やメキシコ人に対する差別や偏見が浮き彫りになる。

 スタンプのブルーの瞳や青空が、タイトルの「ブルー」を象徴するかのように美しく映るのが印象的。ブルーの生死がどちらとも取れる、俯瞰で捉えたラストシーンも印象に残る。

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