田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『恋におちて』

2022-11-18 20:31:14 | 映画いろいろ

『恋におちて』(1985.5.21.銀座文化)

 ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの顔合わせは、あの『ディア・ハンター』(78)以来だが、妙に屈折したカップルという意味では、前作とも通じるところがある。

 実際、何かを背負っていないデ・ニーロや、明るいストリープを見たことはない。その点で、この映画は、普通のラブロマンスとして、今までとは違った2人が見られるかもしれない、という期待があったのだが、双方を家庭持ちにしたことで、またしても2人の持つ暗さと屈折が浮かび上がってきてしまった。

 ただ、この映画に好感が持てるのは、最近の映画に数多く見られる、男女の出会い、即セックスという短絡さがないところだ。この映画のような、偶然の積み重ねで、ゆっくりと時間を掛けて進行していく恋愛の方が好ましく思えるのだが、自分は恋愛に対するセンスが古いのだろうか。

【今の一言】この後、2人はコメディに挑戦したりして、役柄を広げ、今も現役だ。


『逢びき』(45) 
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2613f393381c5c1c6b10df54d4257c5f

 

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『サイレント・ナイト』

2022-11-18 14:25:11 | 新作映画を見てみた

『サイレント・ナイト』(2022.11.18.オンライン試写)

 田舎の屋敷でクリスマスのディナー・パーティーを催そうとしているイギリス人夫婦のネル(キーラ・ナイトレイ) とサイモン(マシュー・グード)。そして彼らの息子のアート(ローマン・グリフィン・デイビス)と双子のハーディ&トーマスの5人家族のもとに、両親の学生時代の親友たちとその伴侶が次々と集まってくる。

 12人の男女は久々の再会を楽しんでいたが、今年はいつものクリスマスとは違っていた。なぜなら、ロシアがまいたという、あらゆる生物を死に至らしめる謎の猛毒ガスが、地球全土を覆い、明日にはイギリスにも到達するのだ。国は、苦しみながら死ぬことを回避するために安楽死用のピルを配布していた。果たして、彼らは“最後の聖夜” をどう過ごすのか。

 マシュー・ボーンがプロデュースした、いかにも時宜を得た映画かと思いきや、本作が構想されたのは、ロシアのウクライナ侵攻はおろか、コロナ禍よりも前のことだというから驚いた。加えて、グリフィン・デイビスと双子の兄弟は、カミラ・グリフィン監督の実の息子たちだというから、これにも驚いた。

 前半は、大学時代の友人たちが集まって、卒業後の生活を語り合う、ローレンス・カスダンの『再会の時』(83)を思い出させたが、この映画は、どこかちぐはぐな感じがし、徐々に不穏な空気が高まっていくという見せ方をしていた。そこに、ブラックユーモアがちりばめられているところが、いかにもイギリス映画らしい。

 そして、安楽死に疑問を感じるアートが、ピルを飲まないと言い出して波紋が広がるところに、この映画の怖さがある。何やら、コロナワクチンの接種をするかしないかの選択、本当に効果があるのかという疑問にも通じるところがあるからだ。

 改めて死について考えさせられる、舞台劇を思わせる設定がなかなか面白い、小品の佳作といった感じの映画。『E.T.』(82)が映ったり、第3次世界大戦による核兵器使用の恐怖を描いた『ザ・ディ・アフター』(83)や、大災害による文明消失を描いた『ザ・ロード』(09)に言及するあたりにも、監督の趣味が出ている。

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【ほぼ週刊映画コラム】『バルド、偽りの記録と一握りの真実』『ザ・メニュー』

2022-11-18 07:01:12 | ほぼ週刊映画コラム

共同通信エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は
好奇心を刺激する“とんでもない映画”『バルド、偽りの記録と一握りの真実』『ザ・メニュー』

詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/?p=1359566&preview=true

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「BSシネマ」『プロフェッショナル』

2022-11-18 06:29:47 | ブラウン管の映画館

『プロフェッショナル』(66)(1974.10.2.水曜ロードショー)

 メキシコ革命の元軍人ラザ(ジャック・パランス)たちが山賊となって暴れ回り、資産家のグラント(ラルフ・ベラミー)の妻マリア(クラウディア・カルディナーレ)を誘拐する。

 身代金を要求されたグラントは、妻を奪還するため、リーダーのリコ(リー・マービン)、ダイナマイトの名人ビル(バート・ランカスター)、馬の専門家ハンス(ロバート・ライアン)、弓矢と追跡が得意なジェイク(ウッディ・ストロード)という、4人のプロフェッショナルを雇う。4人は山賊が潜む砂漠に向かうが、そこで誘拐の本当の理由を知らされる…。

 監督・脚本リチャード・ブルックス、撮影コンラッド・ホール、音楽モーリス・ジャール。専門職という発想は面白かったが、ストーリーがいまいちで、ちょっと残念な映画という気がした。弓を射るストロードの姿は『七人の侍』(54)の勘兵衛(志村喬)から想を得たと、どこかで読んだか聞いたかした覚えがある。

 

 

 

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『歌え!ロレッタ愛のために』

2022-11-18 06:23:46 | 映画いろいろ

『歌え!ロレッタ愛のために』(1981.11.20.銀座文化)

 主人公のロレッタ・リンのことは、この映画を見るまでは全く知らなかった。日本ではあまり知られていないのではないだろうか。

 ところで、アメリカはチャンスの国だとよくいわれる。だからアメリカ人は、例えば、一介のトラック運転手の息子から、大リーグのスタープレーヤーとなったロサンゼルス・ドジャースのスティーブ・ガービーの話などをとても好むという。『ロッキー』(76)のような映画が大うけしたのも、そんな国民性を一端を表しているのだろう。

 この映画も、貧しい炭鉱夫の娘としてして生まれたロレッタが、カントリー音楽の女王と呼ばれるまでになるストーリーだが、よくある苦労ものや根性ものにはなっていない。それは、ロレッタが歌手になる道程が、苦労なくとんとん拍子にいったように描かれているからだろう。

 例えば、初めて大きなショーに出演する時のロレッタと夫の会話に、それを象徴するような面白いやりとりがあった。ロレッタ「私、まだ下積みを経験していないのに…」、夫「後からすればいいさ」という具合に。

 そして、その言葉通りに、というわけでもあるまいが、ロレッタは絶頂期に体を壊す。13歳で結婚し、出産。その後、歌手としての名声は得たが、あまりにも早過ぎた歩みのおかげで、精神と肉体のバランスが崩れても何の不思議もない。いや、そうなって当然だろう。

 やがて、ロレッタは見事にカムバックするのだが、それは夫の助けなしにはできなかった。この夫婦の二人三脚ぶりが、実にほのぼのとしていてとてもいい。

 荒くれ者で、遊び人だった男が、妻となったロレッタのために世話をする姿はけなげに見えるし、やがて起きる妻のヒモ的な立場に悩むとところなどは、迫るものがあった。トミー・リー・ジョーンズの好演である。

 また、ロレッタの家族の一人一人がとてもいい。特にザ・バンドのレボン・ヘルムが演じた父親役が絶品だった。それにしても、洋の東西を問わず、貧乏人の子だくさんというのはあるのだなあと思った。

 そして、ロレッタを演じたのが、『キャリー』(76)のシシー・スペイセク。13歳の世間知らずの娘が成長していく姿を見事に体現し、歌手になってからは、どんどんときれいになっていき(メークのせいもあるが)、本物のロレッタそっくりに歌も歌った。これぞまさしく女優である。アカデミー主演女優賞を受賞したのもうなずける。

 

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「銀座文化」(現・シネスイッチ銀座)1

2022-11-18 00:13:49 | 違いのわかる映画館

 

【違いのわかる映画館】シネスイッチ銀座(2011.9.)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4fcbb212e879240a6bb462a86b788952


『オーメン』(1977.6.10.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0d182c36fde2365993a22b5f0bf5ee18


『がんばれ!ベアーズ』(1977.8.27.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d05439ecb2c9c43a524c9e9b40c09f09


『スター誕生』(1977.11.19.)

 バーブラ・ストライサンドが目立ち過ぎた感じ。クリス・クリストファーソンがやたらとみじめに見えた。ただし、音楽は「エバーグリーン」など、素晴らしかった。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cb83ecfbd143b700725e08dda4a8c415
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8f6f03677294e681afe7158d1691b03f
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/43007834793b7b09b8443bd48b357c2b


『スラップ・ショット』(1978.1.15.)

 ポール・ニューマンが、相変わらずひょうひょうとしていて面白かったが、ジョージ・ロイ・ヒルの映画にしては物足りなさを感じた。テーマ曲の「愛とは強いもの」(マキシン・ナイチンゲール)がごきげん。


『八つ墓村』(1978.2.5.)

 演技陣は、ショーケン、小川真由美、山崎努はじめ、皆すごい。渥美清の金田一耕助もなかなかよかったが、やはり石坂浩二のイメージが強い。横溝映画のもう一人の顔、磯川警部役の花沢徳衛もいい味を出していた。野村芳太郎の映画にしては、もう一つ心に迫るものがなかった。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/480e2a191aa22a1f5954a170fc11c77e


『ミッドナイト・エクスプレス』(1979.11.22.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/94197835eee7945e7b29bd2197c79a17


『歌え!ロレッタ愛のために』(1981.11.20.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f87408ddf5d5db1e0a31151d407d2c29


『昔みたい』(1982.2.7.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5721f5edbf957fbbf6ad1be8501f8595


『炎のランナー』(1983.4.11.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d5b0823bfa6bc9ad8252b1779a2fa598


『ソフィーの選択』(1983.12.28.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/2e9f435d378a5d68a2b03da9c3ba6ae6

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