『ハンター』(80)(1981.5.1.)
スティーブ、あんたも俺たちと同じように弱いところもある人だったんだねえ。この映画では、『大脱走』(63)や『ブリット』(68)のようなカッコ良さは見られず、『ネバダ・スミス』(66)や『パピヨン』(73)のような執念も見られず…。だから、あんたの出た映画の中では、カッコ悪い方に入るけど、でも、身近で、人間くさくて、正直なこの映画、俺は好きだよ。
『真昼の決闘』(52)のゲーリー・クーパーや『ラスト・シューティスト』(76)のジョン・ウェインのように、かつてのスターが、年を取った自分に見合った役を演じるには、相当な覚悟がいると思う。それは、衰えた自分を認め、なおかつ観客にもそれを知らせることになるのだから。
この映画でも、あのスティーブ・マックィーンが、おんぼろ車の扱いにおたおたし(『ブリット』とは大違い)、追っ掛けのシーンでは息を切らせ、屋根から屋根へのジャンプを躊躇し、敵に張り倒され、老眼鏡を掛け、「年を取った」「疲れた」などとのたまうのだ。
そこには、アクションスターとして俺たちを酔わせた彼とは別人の男が存在した。でも、それががんと闘い亡くなった実際の彼の姿と重なって、何だか寂しさと感動で胸がいっぱいになった。どうしても、この映画を、彼の死から離れて見ることはできなかったのである。
恐らく、彼はこの映画の撮影中に、がんとの徹底的な闘いを誓ったのだろう。だから、何もそんなところまで見せなくてもいいのにと見る側が思うような、疲れたアクションややつれた姿を必要以上に見せたのではないか。「俺は病気でこんなになっちまったけど、最後まで闘うぜ」とでもいうように。
ところが、ラストの子どもを抱いた笑顔と「ゴッド・ブレス・ユー(お大事に)」の一言は、達観した彼が観客に向けて発した遺言のようにもとれる(そこに重なるミシェル・ルグランの音楽がまたいい)。だから、この映画は、闘いか諦めかという当時のマックィーンの揺れる心を象徴しているような気がして、とても心に残るのだ。監督はバズ・キューリック。
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「男もほれるカッコいい男」
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『エクスタミネーター』(80)
B級映画(本来は、映画に等級を付けてはいけないと思うが…)にしては、なかなかの出来である。監督・脚本はジェームズ・グリッケンハウス。
70年代以降のアメリカ映画の傾向の一つである“ベトナム帰り”ものに、超バイオレンスを加味したこの映画は、数年前にチャールズ・ブロンソンが主演した『狼よさらば』(74)を思わせる内容だが、一味違うのは、主人公(ロバート・ギンティ)がベトナム帰りであるが故に、次第に殺人に酔っていくところである。
確かに、殺す相手は憎むべき奴らではあるが、その殺し方が尋常ではない。それは、戦場という極限状態を体験した者にしかできないすさまじいものだった。そこが、いかにも今の病めるアメリカの姿と重なるような気がして、印象に残った。
『狼よさらば』も、この映画も、最後は主人公が生き残る。アメリカにもまだこのぐらいの良心は残っているという感じがして、殺伐とした映画のラストとしては、少しは救われる思いがした。
「蒲田パレス座」(1995年閉館)
マイ・シネマパラダイス・カマタ
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『歌麿 夢と知りせば』(1978.2.26.)
岸田森は歌麿役にはうってつけな感じ。平幹二朗の夢の浮橋が、あの時代の退廃美のようなものを象徴していた。嶺山月役の山城新伍や風来山人役の内田良平もななかなかいい味を出していた。でも、わざわざポルノ仕立てにしなくてもよかったのではないか。
『スキャンダル』
主演のリザ・ガストーニがすさまじい。女の顔は一つじゃないのよ、といった感じか。フランコ・ネロがイメージを一新して、人妻をいじめる役に徹していた。夫役のレイモン・ペルグランが、やたらとかわいそうに見えた。
『ブリンクス』(1979.7.9.)
ピーター・フォークをはじめ、多彩な出演者たちをよくぞ集めた。さすが、ウィリアム・フリードキン。
『グレート・スタントマン』
バート・レイノルズが快調だが、サリー・フィールドはレイノルズにはもったいない気がする。スタントマン万歳!
『アイズ』
フェイ・ダナウェイがさすがにうまいが、話はつまらない。バーブラ・ストライサンドの主題歌はいい。
『エイリアン』(1979.12.28.)
SFというよりも、よくできたゲテモノといった感じ。腹からエイリアンが飛び出すところが圧巻。いざとなると、女の方が強いのか。
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『スーパーマン』
人類の昔からの夢である、空を自由に飛ぶという夢をかなえ、満喫させてくれる楽しいSF映画。
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