『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』(2022.11.13.オンライン試写)
日本を代表するクライマー・山野井泰史に密着取材したドキュメンタリー。
世界の巨壁に単独・無酸素・未踏ルートで挑み続け、2021年には登山界最高の栄誉であるピオレドール生涯功労賞をアジア人として初めて受賞した山野井泰史。手足の指を10本失った後も、彼の挑戦は終わらず、伊豆半島にある未踏の岩壁を相手にしたりしている。
自身もヒマラヤ登山経験のあるというジャーナリストの武石浩明が監督し、長期にわたる取材を敢行。貴重な未公開映像や、同じく登山家である妻の妙子への取材、関係者の証言などを交えながら、その軌跡を振り返り、“垂直の世界”に魅せられた男の生きざまに迫る。
ナレーションを岡田准一が担当。2022年3月に開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2022」で上映されたバージョンに9分間の新規映像を追加した「完全版」。
同じく今年公開された、カナダの若き天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレールを追ったドキュメンタリー映画『アルピニスト』を見た時にも思ったのだが、山野井の行動も、クライミングに興味のない者から見れば、まさに狂気の沙汰である。
一般の社会には適合できず、クライミングをすることで自らの存在を証明する行為には、植村直己やルクレールらの姿が重なるところもあると感じた。ただ、彼らと山野井の違いは、今のところちゃんと生還しているということだ。
そして、こうした映画を見るたびに、「なぜ人は山に登るのか」「われわれは、なぜ、あきれながらもアルピニストの姿に心を引かれるのか」という永遠の謎が頭をもたげる。
『アルピニスト』『神々の山嶺(いただき)』
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