『ザリガニの鳴くところ』(2022.10.31.ソニー・ピクチャーズ試写室)
1969年、米ノースカロライナ州の湿地帯で、裕福な家庭で育ち、町の人気者だったチェイス(ハリス・ディキンソン)の変死体が発見された。殺人の容疑をかけられたのは、「ザリガニが鳴く」と言われる、生き物が自然のままに生きる湿地帯で、一人で暮らすカイア(デイジー・エドガー・ジョーンズ)だった。
カイアは、父親のDVの中で育ち、6歳の時に両親に捨てられ、学校にも通わず、湿地の自然から生きる術を学び、たった一人で生き抜いてきたが、村人からは“湿地の娘”と呼ばれ、さげすまれてきた。
ミルトン弁護士(デビッド・ストラザーン)は、裁判に備えて、カイアから、心優しき青年テイト(テイラー・ジョン・スミス)との出会いと別れ、そしてチェイスとの関係などを聞き出していくが、果たして裁判の行方は…。
カイヤにとっては、このミルトン弁護士とテイト、唯一彼女のことを気にかける雑貨屋の黒人夫婦(スターリング・メイサー・Jr、マイケル・ハイアット)の存在が救いとなる。
原作はディーリア・オーエンズの同名小説。製作は女優のリース・ウィザースプーン、監督はオリビア・ニューマン、脚本は『ハッシュパピー~バスタブ島の少女~』(13)のルーシー・アリバー、加えてテイラー・スウィフトが映画のためにオリジナルソングを書き下ろした。皆女性というところがこの映画の真骨頂。彼女たちの、同性故のカイアへの共感や思い入れが表されているのだろう。
裁判と回想を織り交ぜながら、自然の中でのカイアの壮絶な半生、チェイス殺害の犯人捜しのミステリー、そしてカイアとテイトとのラブロマンスという三つ巴の展開を見せる。盛りだくさんな分、本格ミステリーとしてはいささか弱くなったが、最後の、ある小道具を使ったどんでん返しで、ミステリーとしての面目は一応保っている。
ただ、これは映画のマジックというか、ずるさなのだが、カイアを演じるのが、エドガー・ジョーンズのような美形だからそ成立する話だという気もする。