田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『斬る』4Kデジタル修復版

2022-11-05 23:32:02 | ブラウン管の映画館

『斬る』4Kデジタル修復版(62)

 天才剣士・高倉信吾(市川雷蔵)は、3年の武者修行で三弦の構えという異能の剣法を会得し、故郷に帰ってくる。だが、ある日、父の信右衛門(浅野進治郎)と妹の芳尾(渚まゆみ)が、隣家の池辺(稲葉義男)に惨殺される。死に瀕した信右衛門から、自らの出生の秘密を聞き、池辺を斬った時から、信吾の流転の日々が始まる。

 育ての親を亡くし、出生の秘密を知り、流転の末、やっと生涯仕えられそうな人物と出会えたと思ったら…。天才剣士といわれた男の数奇な運命を描く。信吾の実の親に藤村志保と天知茂 江戸で新吾が仕官する松平大炊頭に柳永二郎。

 原作・柴田錬三郎、監督・三隅研次、脚色・新藤兼人、撮影・本多省三、音楽・斎藤一郎。71分という短い上映時間の間に、話があっという間に進む。ラストも「えっ、これで終わり…」という感じで、重い話なのに余韻が残らない。名作と聞いていたのだが、少々期待外れな感じがした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「渋谷全線座」

2022-11-05 13:43:43 | 違いのわかる映画館

 「渋谷東映」の隣は、今は渋谷全線座ビルだが、1977年までは「渋谷全線座」という名画座だった。大昔は封切館だったようで、2階席もあり、名画座としては大きかったことが印象に残っている。


『ダーティハリー』『ポセイドン・アドベンチャー』(1974.8.7.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/20f26796bf598d8c8319f444fb859656
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0c2bb3546d412da1fbc1b0f1b4c8d4c9


『マックQ』『ゲッタウェイ』(1974.12.4.)

 今はなき渋谷全線座で1974年12月4日に初見。併映はジョン・ウェイン主演の『マックQ』だったから、まだデュークもマックィーンも現役だったのだ。

 この映画でのマックィーンは、ほとんど黒のスーツ姿で通す。アリ・マッグローが段々色っぽくなっていくのは、実生活でのマックィーンとの関係が反映されたからなのだろうか。

 バイオレンス描写の激しさで名をはせたサム・ペキンパーだが、実は彼の描くアクションシーンはかったるい。それはスローモーションの多用と粘着質の描写で、見る側のテンポを狂わせるせいだろう。だからこの映画も、前半は何度見ても眠くなってしまうのだ。

 というわけで、大傑作とは言えない映画なのだが、アル・レッテェリが怪演を見せるほか、ベン・ジョンソン、スリム・ピケンズ、リチャード・ブライト、ダブ・テイラー、ボー・ホプキンスら、ペキンパー組とも呼ぶべき脇役たちの姿が見られるのはうれしい。


『007/ドクター・ノー』『007/ダイヤモンドは永遠に』(1975.6.14.)

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/7fcec998a3e9aa1a1b2b1e800d6a59cb


『さらば愛しき女よ』『風とライオン』(1977.1.22.)

 1940年代のムードが最高。推理映画的な要素も多分にあって楽しめる。フィリップ・マーロー役のロバート・ミッチャムがいい。

 『アラビアのロレンス』を思わせるところもある映画。ショーン・コネリーがやたらとカッコいい。ライズリ(コネリー)が馬に乗りながら銃を持って去っていくラストシーンは感動的。キャンディス・バーゲンもなかなかよかった。

https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/4f68b2cc9fbd22a3c6465f6c8d9c365c
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/3d654a53d9418b1f04b52c796030d7de
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/ee613faa762d4ffcd05f26688fb3d79f

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「渋谷東映」閉館

2022-11-05 08:07:56 | 違いのわかる映画館

 宮益坂下の「渋谷東映」も12月4日で閉館になるという。ここは前を通ることは多かったが、おいにせがまれて見た「東映まんがまつり」以外はあまりなじみはなかったのだが、それでも閉館と聞くと一抹の寂しさを感じる。


『ゲゲゲの鬼太郎 大海獣』(1996.7.14.)

 今回、驚いたのは、水木しげるの原作漫画を大きく改変していた点だった。原作の、功名心に取りつかれた科学者が、鬼太郎に注射を打って海獣に変身させてしまう件が全くカットされ、ただの外国対日本の妖怪同士のバトルものになってしまっていたのだ。

 まあ、社会の変化や差別問題も含んだ表現の規制もあり、昔通りにというわけにはいかなかったのかもしれないが、この場合、科学万能主義に一石を投じるという、原作の骨子は残すべきだったと思う。

 何々、子どもはそんなところまで見ていないって? そんなことはない。事実、この俺ですら、子どもの頃に読んだ原作漫画の衝撃をちゃんと覚えているのだから。子どもにこそ、しっかりとしたものを見せるべきだと思う。


『地獄先生ぬーべー 午前0時ぬーべー死す!』『ゲゲゲの鬼太郎 おばけナイター』(1997.3.16.)

 今回の2本のアニメに共通して描かれていたのが、子ども同士のいじめや仲間外れだったのが、少々気になった。しかもそれを解決するのが、ぬーべー先生や鬼太郎という、実在しない妖怪となると、笑ってばかりもいられない。

 実際のところ、今の学校や子ども同士のコミュニティでのこうした問題は、人間だけでは解決できないほど、深刻なものなのかと考えさせられてしまった。

 もちろんこの映画は、大人が作ったものだから、そう大げさに考えなくてもいいのかもしれないが、子どもたちを信じてやりたいと思う半面、彼らの行動に対して、ある程度は大人が介入しなければならないのではないかという気もする。


『長靴をはいた猫』『銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー』(1998.3.29.)

 懐かしの東映まんがまつりの中でも傑作の一つをリバイバル公開。子どもの頃に夢中になって見たものを、おいと一緒に見るという時の流れに、感慨深いものを感じていると、おいは横でスヤスヤと寝ている。いやはや、勝手な思い入れはよくないということだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ドント・ウォーリー・ダーリン』

2022-11-05 07:37:17 | 新作映画を見てみた

『ドント・ウォーリー・ダーリン』(2022.11.4.ワーナー神谷町試写室)

 アリス(フローレンス・ピュー)は、砂漠の中に作られた1950年代風のビクトリーという街で、夫のジャック(ハリー・スタイルズ)と共に幸せな日々を送っていた。

 だが、この街には「夫は働き、妻は専業主婦でなければならない」「街から勝手に出てはいけない」といったルールが定められていた。

 ある日、アリスは飛行機の墜落を目撃し、それ以降、彼女の周囲では不可解な出来事が続発する。次第に精神が不安定となり、周囲からも心配されるアリスだったが、あることをきっかけに、この街に疑問を抱くようになる。

 『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』(19)で監督として高く評価された女優のオリビア・ワイルドの長編監督第2作のユートピアスリラー。街のリーダーの会社社長フランクにクリス・パイン、その妻シェリーにジェンマ・チャン。

 皆幸せそうに暮らしているのが映るのだが、何かがおかしい。不穏な空気が漂い、見ていて落ち着かない。ジャックたちの仕事は謎で、その内容は秘密だが、フランクは世界を変えると豪語している。どうやらモデルは、マンハッタンプロジェクト(核兵器の開発)のようだ。

 また、妻は夫を助けるだけの存在で、家にいてほしいという男たちの理想、フェミニズムの裏返しについて、女性であるワイルド監督が描くというのは、皮肉っぽくて面白いが、話が凝っているのに展開が雑で、いろいろな疑問が解消されないままに終わるので、すっきりしないところがある。

 ネタバレになるので、詳しくは書けないが、インスパイアされたであろう映画のタイトルを挙げてみると、『めまい』(58)『ローズマリーの赤ちゃん』(68)『ステップフォードの妻たち』(75・04)『トゥルーマン・ショー』(98)『ゲット・アウト』(17)…。これだけ並べれば、勘のいい人は、この映画がどんな映画なのかが分かると思う。

 アリスのイメージはブリジット・バルドーやアン・マーグレット、ジャックは『草原の輝き』(61)のウォーレン・ベイティだという。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする