田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『マーウェン』

2019-06-20 08:45:53 | 新作映画を見てみた

 ヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害に遭い、障害を負いながらも、独自の世界観で写したフィギュア=人形の写真でカメラマンとして認められたマーク・ホーガンキャンプ(スティーブ・カレル)が、創作活動を通して回復していく姿を描く。マークがミニチュアで作った第二次世界大戦中の架空の村の名前がタイトルになっている。
 
 監督のロバート・ゼメキスは、これまで『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『ロジャー・ラビット』(88)『フォレスト・ガンプ/一期一会』(94)『ザ・ウォーク』(15)などで、最新の映像技術を駆使しながら、ディテールにこだわり、時空を越えたり、過去を鮮やかによみがえらせたりしてきたが、今回は現実とマークの空想世界を交差させて描いている。
 
 そして、フィギュアに生を与え、観客をマークの空想世界に連れていくことに腐心した結果、CGではなくモーションキャプチャーを使って映像化したという。確かに映像的にはとても面白い。
 
 この映画の発端はマークを描いたドキュメンタリー映画にあり、そこにゼメキスがマークの空想の世界を映像化して入れ込み、二重構造とすることで、マークの内面(恨み、暴力性、フェチシズム)を浮かび上がらせたわけで、障害故に無垢なところがあるマークはフォレスト・ガンプともつながるところがあるのだが、この映画の場合は、現実と空想世界とのバランス感覚が独特でグロテスクな描写も目立つ。こうした部分への好嫌が評価の分かれ目となるのではないかと感じた。
 
 私見ではマークとホーギー大尉以外は、実物とフィギュアのつながりが弱く、両者が重なってこないところがこの映画の弱点だと思う。そこが、主人公以外の人物もしっかりと描いていた『フォレスト・ガンプ/一期一会』との違いだ。
 
 
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『ゴールデン・リバー』

2019-06-19 10:00:38 | 新作映画を見てみた

 舞台は、1851年のゴールドラッシュに湧く米西部。シスター姓の殺し屋兄弟イーライ(ジョン・C・ライリー)とチャーリー(ホアキン・フェニックス)は、提督を名乗るボスの命令で、川内の金を発見するための薬品の化学式を知るウォーム(リズ・アーメド)と連絡係のモリス(ジェイク・ギレンホール)の行方を追う。
 
 米・仏・スペイン、ベルギー、ルーマニアの合作であるこの映画の監督はフランス人のジャック・オーディアール。このところの、異邦人が撮った何本かの西部劇には、正直なところストーリーにも風景にも違和感を覚えさせられたのだが、この映画はひと味違った。
 
 それは、兄弟がオレゴンからサンフランシスコに向かう道中を描くロードムービー的な要素があることが最大の理由だが、撮影のブノワ・デビエが35ミリのフィルムで撮ることにこだわったためか、主にスペインやルーマニアでロケされたにもかかわらず、昔のマカロニウエスタンに比べれば、ずっと米西部らしく見えるのも大きなポイントだ。
 
 またストーリー的には、金を巡る4人の男たちの物語と聞いて、見る前は、ジョン・ヒューストンの『黄金』(48)のような話を想像したのだが、いい意味で裏切られた。何だか西部のホラ話(トール・テール)を見ているような気分になるのだ。
 
 パトリック・デウィットの原作『シスターズ・ブラザーズ』は、そもそもタイトルとなった主人公の名前の設定がふざけているし、向こうではミステリーでありながらユーモア賞の候補になっているぐらいだから、トール・テール的な雰囲気の中で、金欲が生む人間の滑稽さやウォームの山師的な側面を描いているのではないかと思われる。
 
 オーディアールは、映画化に当たって、原作の兄弟の設定を入れ替え、ウォームをヨーロッパからアメリカに移住してきた社会主義者の前身として描くなど、原作を大幅に改変してはいるが、トール・テール的な雰囲気だけは残した。そこがこの映画を西部劇たらしめている理由だと感じた。
 
 また、この映画は、モリスの日記、馬、ショール、歯ブラシなど小道具の使い方が印象に残るし、兄弟の母親をニューシネマ時代の名脇役キャロル・ケイン、提督をルトガー・ハウアーが演じているのも面白い。オーディアール監督には今まであまりいい印象を持てなかったのだが、この映画でちょっと見直した。
 
『黄金』
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「2019年5月の映画」転載

2019-06-19 07:13:36 | 映画の森

「KyodoWeekly」5月27日号から「5月の映画」共同通信のニュースサイトに転載
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2019-06-18_2066069/


 

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それを作れば彼はやって来る『フィールド・オブ・ドリームス』

2019-06-18 12:45:14 | 映画いろいろ
 昨日のNHKの逆転人生「世界に誇るクラゲ水族館 閉館危機からの奇跡」は、閑古鳥が鳴いていた山形県鶴岡市の加茂水族館がクラゲの展示で一発逆転をした様子が紹介されていた。
 
 
 
 最後に映された水族館に連なる来場者の車の列を見ながら思い出したのが、ラストシーンで、主人公のレイ(ケビン・コスナー)がトウモロコシ畑に作った野球場を人々が見に来る様子が映る『フィールド・オブ・ドリームス』(89)だった。番組では、いろいろと助言する“クラゲの神様”まで出てきた。これも『フィールド・オブ・ドリームス』の劇中のお告げ「If you build it, he will come.=それを作れば彼はやって来る」と重なるようで面白かった。
 
All About おすすめ映画『フィールド・オブ・ドリームス』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6479aefb9806925cdcd8a354a58538b3
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『アビエイター』

2019-06-18 09:23:45 | 映画いろいろ

『アビエイター』(04)(2006.3.5.)

   

 『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)に続く、マーティン・スコセッシ監督、レオナルド・ディカプリオ主演作。伝説の大富豪、破天荒な映画プロデューサー、飛行機狂として知られ、変人と呼ばれたハワード・ヒューズの伝記映画『アビエイター』をWOWOWで見る。

 今回の主役のヒューズは実在の人物であり、しかもエピソードも豊富だが、やはりスコセッシの語りは分裂症気味で、ストーリー展開に難がある。彼にこの題材は合わなかったと思うし、またもやディカプリオの演技過多を見せられると、このコンビは互いにあまりいい影響を与えていない気がする。

 もっとも、この映画は主人公のヒューズはもちろん、彼とかかわりがあったキャサリン・ヘプバーン(ケイト・ブランシェット)も、エバ・ガードナー(ケイト・ベッキンセイル)も、エロール・フリン(ジュード・ロウ)も亡くなった今だからこそできたものだとは思う。

 公聴会のシーン(上院議員役のアラン・アルダがうまい)はコッポラの『タッカー』(88)を、ラストシーンはオーソン・ウェルズの『市民ケ-ン』(41)の“ローズバット=薔薇のつぼみ”を想起させるあたりに、かろうじて映画狂スコセッシのこだわりが残っていた気がした。

 

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『ギャング・オブ・ニューヨーク』

2019-06-18 07:59:39 | 映画いろいろ

『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)(2005.3.28.)

  

 19世紀のニューヨーク。マンハッタンの一角ファイブ・ポインツを舞台に、アメリカ生まれの“ネイティブ・アメリカンズ”とアイルランド移民の“デッド・ラビッツ”というギャング同士の抗争と人間ドラマを描く。監督はニューヨーク出身のマーティン・スコセッシ。

 題材の良さや、スコセッシ自身の故郷への思い入れの強さに比して、またも彼のストーリーテリングのまずさ(例えば『エイジ・オブ・イノセンス』(93)のような)が示され、脂っこいバイオレンス(例えば『グッドフェローズ』(90)のような)が描かれる。こうしたパターンはもはや変わらないのだろうか。

 この、いつもの“違和感スコセッシ”と、彼と組むとどんどん悪い方に変わっていく感があるレオナルド・ディカプリオのコンビ映画は、必然的にグロテスクなものになる。この映画の場合は、ダニエル・デイ・ルイスの存在が救いではあるのだが…。だから、2人が再び組んだハワード・ヒューズ伝『アビエイター』(04)もあまり見たくない気がするのだ。

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『男と女』のその後

2019-06-17 13:38:45 | 映画いろいろ

 今日のNHK BSの映画はクロード・ルルーシュ監督、フランシス・レイ音楽の『男と女』(66)

 

 昨晩、偶然“映画の友”との飲み会の席で、先のカンヌ映画祭で『男と女』の現在を描いた『The Most Beautiful Years』が上映されたことを聞いた。会見にはアヌーク・エーメとジャン・ルイ・トランティニャンが姿を見せたという。

 実は、ルルーシュ+レイが、1870年代のアリゾナを舞台に、『男と女』を、アメリカの西部男(ジェームズ・カーン)とフランス女(ジュヌビエーブ・ビジョルド)の恋に仕立て直した『続・男と女』(77)という珍品があるが、これは別物として考えるべきものだろう。

 正統な続編は、前作から20年ぶりにエーメとトランティニャンの再共演でその後の彼らを描いた『男と女Ⅱ』(86)がある。今回は、その『Ⅱ』から30数年ぶり、オリジナルからは何と50数年ぶりの続々編となる。その話を聞いて、見たいような見たくないような、ちょっと複雑な思いがした。

 

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【インタビュー】『ある町の高い煙突』渡辺大

2019-06-17 10:42:01 | インタビュー
 
「異なる立場の人々の共生を描くことは、とてもすてきな試みだと思いました」
 
『ある町の高い煙突』
 
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『ハタリ』

2019-06-16 12:34:17 | 映画いろいろ
 今日のシネフィルWOWOWは朝から『ハタリ』。
 
 
 アフリカのサバンナを舞台に、世界各国の動物園から依頼を受け、野生動物を捕獲するプロハンターたちの活躍を描く。そんな彼らのもとに、美しい女性カメラマンが現れて…、という西部劇の意匠をサバンナに置き換えたような一編。
 
 この映画は、『リオ・ブラボー』(59)『エル・ドラド』(67)『リオ・ロボ』(70)と続いた、ハワード・ホークス監督+ジョン・ウェイン主演による、チームプレーを描いたグループ劇の系譜に属す。仲間たちの連帯の媒介として音楽が重要な役割を果たすが、それにウェインは参加せず、楽しそうに眺めているだけ、というのも面白い。
 
 ジョン・ウェイン、レッド・バトンズ、ブルース・キャボット(アメリカ)、ハーディ・クリューガー(ドイツ)、エルザ・マルティネッリ(イタリア)、ジェラール・ブラン、ミシェル・ジラルドン(フランス)、バレンティン・デ・バルガス(メキシコ)という、にぎやかな顔ぶれで、コメディーリリーフ的なバトンズと、対照的なマルティネッリとジラルドンという“紅二点”が特にいい。
 
 ホークスの映画については、アメリカの批評家はおろか、ホークス本人ですら自分は腕のいい職人監督だと思って作っていたようだが、フランスのゴダールやトリュフォーが、優れた“映画作家”として認めたために評価が一変した。
 
 ただ、彼の映画にはちょっと不器用なところがあるのは否めない。この映画にしても、動物の捕獲シーンをたっぷりと見せたいのは分かるにしても、158分はいかにも長過ぎて間延びするところがあるのだ。
 
 

で、続けて「ザ・シネマ」で、これもフランスが評価した異色西部劇『大砂塵』を放送していた。
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【ほぼ週刊映画コラム】『アラジン』

2019-06-15 14:48:32 | ほぼ週刊映画コラム

エンタメOVOに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』

今週は

女性の主張や生き方の変化を象徴する実写映画化
『アラジン』



詳細はこちら↓
https://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/1191723

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