この映画は、その矛盾の核として、米ソの冷戦による利害関係を浮かび上がらせたり、天皇を政治的に利用しようとするアメリカの思惑などを露わにしていく。ここまで暴かれると、もはやこの裁判自体が茶番にしか見えなくなってくる。
事実、「この裁判を見せしめとして、今後二度と悲劇を繰り返すべからず」と論じたマッカーサーが、朝鮮戦争での原爆使用論がもととなって解任されたり、日本の侵略を裁いたアメリカが、この後、朝鮮やベトナムで取った行動が、この裁判の曖昧さや矛盾を象徴しているとも言えるのではないか。しかしアメリカは、よくもこんな映像を大量に残していたものだと改めて思った。
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/37134669a73224544dd057443de07407
『文学界』8月号に、村上春樹氏の連作短編『ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles』と『ヤクルト・スワローズ詩集』が載っていた。
自分は、氏の本の熱心な読者ではないが、ビートルズと野球となれば無視はできない。どちらも自伝的な要素を感じさせるものだったが、特に後者は、弱いチームを好きになってしまった自分自身への自虐とも誇りともとれる屈折した表現が面白かったし、自分も一番多く訪れているであろう球場は神宮なので、うなずけるところも多かった。ここで長嶋茂雄が通算2000本目の安打を浅野啓司から打った瞬間も見たのだ。
さて、氏とデーブ・ヒルトンのかかわりは知っていたが、名外野手だったジョン・スコットが出てきたのは懐かしかった。読みながら、豊田泰光の打撃練習は凄味があったなあ、1970年代初頭のアトムズには確か赤坂と溜池という選手がいたなあ、外野席はまだ芝生だったよなあ、中学校の近くにピッチャーの井原慎一郎が住んでいてサインをもらったなあ、弟がスワローズのファンクラブに入っていたなあ、応援団長はペンキ屋の岡田さんだった、高校時代の悪友のSがスワローズの熱狂的なファンだった、などとヤクルト球団を巡る脈略のないことを思い出したりもした。皆、遠い昔のことだ。
デーブ・ヒルトンについて
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/66020ed9ad4ead1bbd13b3b9887754de
町を去る決意をした保安官。最後の仕事は、殺人を犯した、彼が思いを寄せる未亡人の息子の始末だった。ちょっと『真昼の決闘』を思い出させる展開を見せる。
襲われて死んだと思われていた元保安官が町に戻ると、恋人は去り、街は荒れ果てていた。田中小実昌の翻訳にいま一つ乗れないものがあった。
南北戦争を引きずる男たち。三角関係、友情、やるせない暴力の連鎖が描かれる。
ほら話(トール・テール)、英雄伝説として面白い。
一人のガンマンの誕生。砂金を巡る追跡劇。
O・ヘンリー的な善意と皮肉に満ちたどんでん返し。
ヘイコックスの「駅馬車」に勝るとも劣らない映像的な描写が秀逸。こちらは田中小実昌の翻訳がいい。
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