みちしるべの伝説

音楽と希望は刑務所でも奪えない。

ダン・タイ・ソン ピアノリサイタル

2019年10月15日 | ライブ&コンサート
素晴らしいリサイタルだった。
ちょっと、とっつきにくい感じのシューベルトも、湿り気のあるショパンも、気品のある、どことなく東洋の仏像を思わせる深みのある演奏だった。
確かに、ショパンは絶品だった。
とても美しい。隅々まで配慮されている。
自然に丸みを帯びたフレーズは、歓びや愛に形があるとすると、あんなふうになるんだろうな思う。
情に流されず、情と理性のギリギリの均衡が取れているんだと思う。どっちに偏っても、音楽は劣化してしまう。
よく弾かれて、多くの聴衆が熟知しているだろう曲も演奏されて、音楽の方向性も良く分かる。

奇をてらうことなく、王道、真正面なのもいいと思う。
ダン・タイ・ソンの演奏を、しっかり聴くのは初めてだったけど、自分にとっては、かなりど真ん中の好きな演奏だった。
しなやかで、瑞々しく、命の通った芸術品を味合わせてもらえた。

手の動きのしなやかなこと。
蝶が舞うように、水中でイソギンチャクが触手を自在に揺らめかせるような、感じ。
それだけでも、すばらしい芸術品だった。

スケ2で、怒涛の連打の盛り上がりのあと、目の覚めるようなレーザービームの跳躍が決まるのは、全く持って、壮観だった。
立ち振る舞いも、謙虚な感じで、素晴らしかった。
演奏前に、腕をまっすぐ、ピアノに向かって伸ばす、精神統一のスタイルも印象的だった。

なにがしか東洋的な明るさ、それこそ涅槃の境地?を体現しているような感じ。
祈りにも似た、美しい音楽をありがとうございました。
静かに魂を揺さぶられる一夜だったなあ。



@愛知県芸術劇場コンサートホール
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