「天災は忘れた頃にやって来る」、防災に関する事項ではよく用いられる有名な言葉で、随筆家の寺田寅彦の言葉に基づくという。大正12(1923)年9月の関東大震災に遭遇し調査に加わったときに残した警句という。随筆の中で「人間も何度同じ災害に会っても決して利口にならぬものであることは歴史が証明する。東京市民と江戸町人と比べると、少なくも火事に対してはむしろ今のほうがだいぶ退歩している。そうして昔と同等以上の愚を繰り返しているのである」と指摘した。
警句は「天災はその恐ろしさを忘れたころにまた起きる」ということを表す。災害直後は人々の心構えもしっかりしているが、時が経ちそのことを忘れたころに再び災害は見舞うという警句。普段から十分な心構えをしておくことが大事であるという戒めでもある。
間もなく東日本大震災から5年、被災されたひとの7割以上が復旧・復興が遅いというアンケート結果が載っている。原発という人災が無く天災だけなら復興はもう少しスムーズに運んだのではと思う。閣僚が視察する笑顔と笑いに満ちているTV画面を見ると復興は終わったかのような錯覚を覚える。原発再稼動が進む、「東京市民と江戸町人」という比較が将来起きないという保障はどこにもないことが気がかりだ。
戦争はしない、侵略はしない、という憲法の基で戦後を歩んだ日本。最近、憲法を尊重し擁護する義務を負うべき内閣の人らが9条の改憲を盛んに発言する。擁護義務はあるが改憲の発議権はないことを知って欲しい。戦争は天災ではない、忘れたころにやって来なくていい、先の警句に一筆加えてほしい。