この季節の果物のひとつにリンゴがある。本州最西端のここ山口県が産地の限界といわれる。その産地は島根県境近くにあり、家族や同好の仲間と何度かリンゴ狩りに出かけたことがある。そこでの味見は1個を何人かで分けあいながら好みの物を見つける。これも結構楽しく、無邪気なころに戻っている。自家製のリンゴジュースをごちそうになったこともある。
その産地のリンゴが袋入りで積まれている。数個入りの一袋の値段はまあまあといったところ。どれにするか選んでいるとき、横に並んだ夫婦の「美味しいかね」という連れ合いの疑問に「そりゃあ運命いや」とご主人。リンゴの味に運命とはいささか大げさ、と思いながらも、自分も味よしを探しているので運命の意味も解らぬではない。
運命、学校で習ったベートーベンという名前が浮かぶが、これは交響曲第五番ハ単調の日本での通称という。曲が運命を感じさせるのだろうが疎くてわからない。運命とは「人の意志に係わらず身の上に廻って来る吉凶禍福、これは辞書類の説明。運命のなせる業、運命をたどる、よく聞く言葉だがこれまで真剣に考えたことはない。のんびり無頓着に過ごして来たのだろう。
その運命のリンゴ、甘みと酸味が程よく、しゃきしゃきした食感は好みに合い果汁も程よい。吉凶禍福の福、いい運命との出会いになった。美味くてもそうで無くてもそれは自然にめぐってきた運命、寛容な精神の人にはきっと神の恵みがいくだろう。食欲の秋、なんでも美味しく頂いている。