
自覚症状の全くない状況で、定期的に検査している検便のマイナス結果から大腸がんと診断された。その切除手術から5年、今日は最後の定期検査の日。これまで定期的に受けた検査はすべて異状なし、とはいえ最終の日、検査慣れしているとはいえ何か緊張を感じながら朝食抜きで病院へ。
がんの治療成績は5年の生存率で示される。この期間を過ぎると再発や転移が減り一応治ったという判断に至る。術後、主治医から5年間の定期検査を告げられ、欠かさず受けてきた。検査は何種類かの検査項目を経過月数によって組み合わせてうける。最も苦痛なのは内視鏡検査のため腸内を空にすること、知り合いも同じだと話す。検査中は腸内映像を眺めながら医師の話を聞く。不思議な感覚になる。
5年目の検査を終え診察室前のフロアーで待つ。院内という環境からか、ふと手術の朝の窓外の朝焼けをお思い出しながらこれまでの5年間が思い浮かぶ。手術を受けたのは今は更地になっている古い病舎、6カ月目の検査から新病舎、内部は近代化されたと思わせる作りに変わる。内部は変わったが主治医の異動はなく心強かった。
呼ばれて診察室へ、見慣れた部屋に入る。CT画像が大型のモニターに映っている。「5年目の検査結果、異常ありません。術後検査は終わりです」と医師、引き続いて検査結果の説明をうける。そばで聞く妻のほっとした様子が分かる。家庭医と相談しながら検査を続けるよう指導を受ける。高台にある病院を出ると明け方雲っていた空が快気を祝うかのように青空に変わっている。病院に向かって一礼、再び世話にならないようにしよう、そう想いながら病院を後にする。