a letter from Nobidome Raum TEE-BLOG

東京演劇アンサンブルの制作者が、見る、聞く、感じたことを書いています。その他、旅公演や、東京公演情報、稽古場情報など。

客席に向かうベクトル。

2010-09-18 15:09:15 | 東京公演


ただいま本番中ですが、
残すところ2ステージとなりました。

おかげさまで、
いろいろと感想が届いておりますが、
一つご紹介させてください。
(長いので、少しカットしています)


東京演劇アンサンブルを初めて観たが、
何より強く感じたのは、
自分たちの作品を「作り込む」強さと、
それを「観てほしい」「感じてほしい」という、
観る側である私に向けられたベクトルの並々ならぬ大きさだった。
もちろん、それは劇団員の演技力に裏打ちされたものであり、
若い世代の、
いわゆる演劇ユニットやプロデュース団体とは明らかに「異質」のプロ集団的な質感に満ちていた。

会場に入ると、
まずはロシアの避暑地の森林を象徴的ともいえる深い緑で見事に表現した傾斜状の舞台空間に目を奪われた。
開演前から質の高い芝居が観られそうとの予感が五体に広がった。

この舞台空間で、
場面場面でイスやテーブル、
ワインなどの小道具を変化させつつ、
出演陣の台詞の応酬を主力に物語は進んでいく。
ただ、この台詞の言葉が、やや分かりにくかったり感じた個所があり、
もう少し、分かりやすくしてもよいのでは、と感じた次第。

出演陣がほぼ全員が安定した演技を披露してくれたが、
特に、
日々を無為に過ごす小市民の男たちに反発する女医のマーリヤを演じた原口久美子と、
弁護士バーソフが妻のヴァルヴァーラを演じた桑原睦が秀逸だった。
男優陣では、スースロフのおじ役の伊藤克、セルゲーイ役の松下重人、
作家シャリーモフ役の公家義徳が安定感抜群だった。
ちょっと気になったのは、
医師キリールの妻オーリガ役を演じた奈須弘子の棒読み的な台詞は、
あえてそうしたのかと疑うほどの棒読みで、
これが終始、気になって仕方なかった。
他にも何人か、自然な喋り方とは違う奇妙な抑揚の役者もいて、
これは今も、どうしてそうなのか意味不明。




演出面で気になったのは、これだけ立ち位置も上手く、
会話の応酬の妙味が漂う中で、何回か突然、キスを交わすシーンがあったのだが、
これがへっぴり腰の中途半端な接吻で、
やるならやるで真剣にやってほしいし、
そうでないなら「この劇にキスシーンはいらないな」と高まっていたモチベーションを返って減じてしまった次第。
あと、キリール夫妻が外で情交に及ぶシーンは全体とのバランス感からいっても、
無くても良かったのではと思えた。

全体としては非常に素晴らしい作品だけに、
ここでは気になった点を書かせてもらったが、
時間的にも3時間15分は、こちらも体力勝負となる。
とくに、こうした作品では、やはり、人物の性格や葛藤を表現する部分で、
やや重複的な場面も何回か感じられ、それらは、ある程度、そぎ落とせたのではないか、とも感じた。
そうして2時間半くらいにした方が、観る側の緊張感も維持しやすいので。

とはいえ、この圧倒的な質感と観る側の私に向けられるベクトルの大きさには、
本当に驚くほど魅了された。


多少耳が痛い部分もあるのですが、
初めてご覧いただいたということもあり、
率直に書いてくれました。
ある意味、東京演劇アンサンブルらしさという部分が、
まだまだ理解されていないのかもな、
というか、
それも乗り越えられるものにしたいとも思っています。

とはいえ、
あえての苦言と受け取り、更なる精進をしたいと思います。
加えて言えば、
ほかのお客様からは、
「意味不明」という部分をほめていただいたりと、
受け取る側も実にさまざまだな、と感じる公演ともなっています。

本邦初演の戯曲ということで、
ほぼ、カットをしないプランで上演しております。
それもまた、こういう大作ならではの魅力でもありますので、
ぜひ、ご堪能いただければと思います。

残すところ2日間。
どちらもまだ残席がございます。
連休中の過ごし方に、
武蔵関で観劇、というのはいかがでしょうか?




9月19日(日)14時
9月20日(月・休)14時

全席自由
当日=5,000円
前売 一般=4,500円 学生=3,500円

公演詳細は劇団HPまで