空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

イタリア:難民救助船船長を警察に対する攻撃の廉で逮捕

2019-06-30 11:22:09 | Newsメモ
 ああうん、まずいと思う。

BBC Italy migrant boat: Rescue captain accused of trying to sink police boat 29 Jun 2019

Italian police arresting captain Carola Rackete at the port of Lampedusa

 とキャプションにあり、なんというか古来のアレコレに慣れ親しんだ私としては、「すわこれは警察による不当逮捕の可能性がっ」とか思ったりもするわけだが―

Italy's far-right interior minister, Matteo Salvini, has accused the captain of a ship carrying rescued migrants of trying to sink a police boat.

 無理に入港しようとして、阻止任務に当っていた警察が危ない目に―と偽装しての不当逮捕、くらいは考えるのだが―かなり無理。これ、マジに『死にたくないなら退いときな』で押し通ったな…。

 極右政治家、という枕詞で親しまれるサルヴィーニは、この船長を「カネモチの、白人のドイツ人」とし、戦争行為を行った―と表現する:

On Saturday, Mr Salvini called Ms Rackete a "rich, white, German woman" who had committed "an act of war".

"She tried to sink a police launch with officers on board at night," he said. "They say 'we're saving lives', but they risked killing these human beings who were doing their job, it's clear from the videos."

 ”あいつらは、自分たちは命を救う、だの言ってるけど、職務についてるだけの人らを殺すリスクを冒してるよな!”。となるとrich, whiteというのはかなり憎々しげな表現とも思われ、『カネモチの道楽でウチの国に無闇に難民、連れてくるんじゃねえよ! その船を買うカネで、難民向けの何か事業でもやれや!』という罵倒にも繋がるだろう。

 つーかサルヴィーニ支持のひとたちの気持ちにクリーンヒットするだろな、これ。poorなwhiteに、とでもいおうか。他ならぬドイツ国民のお気持ちでイタリア・ギリシャはキッツイ目に遭ってんだからな、それ、忘れるなよ、というのがGermnaの語に含まれるだろうし、聞くほうはそう読み取るだろう。

He previously said the migrants could only disembark if they headed straight to the Netherlands, where the Sea-Watch 3 is registered, or to Germany.

The 31-year-old has taken part in expeditions, both for research organisations and for the environmental group Greenpeace.

Ms Rackete later joined Sea Watch, a non-governmental association that carries out rescue missions in the Mediterranean.


 でまあ、これまでは有名でもなかった彼女は、これで世界の報道に取り扱われる大闘士としてスターダムへ。あとは講演会商売で結構な位置にはつけるだろう。まあ、その、イタリアの国費(※彼女が連れてきた難民の保護費)をコストとして。

 で。

Sea Watch chairman Johannes Bayer expressed support for Ms Rackete's actions and tweeted that he was "proud of our captain".

 とまあ、「シー・ウォッチ」はこの行動を是とするのだが(まあ、それはそうか)―さて、どこまで市民的支持を得られるかどうかはまた別のことだろう。

 どうかねえ、あからさまに絶望的に反人権的な国家の警察・軍隊を打破する(時に殺す)のは、まあ正当な闘争の一環として認められる見込みがあるが―イタリア海洋警察とかは、止むを得ず血祭りに上げるべき猛悪な政府の手先だろうか。

 …しかしなあ、いくらヤカインでも、単なる警邏の警官を突如襲って殺したらダメだろうしなあ。

 …サルヴィーニの言うことも、それはそれで妥当だしなあ。
 確かに、今日も昨日も明日も、地中海ではボートが沈み、沈みつつあり、沈むであろう。それゆえ常時人命救助活動が行われねばならぬ。だからできるだけ時間を空費しないで済むように、手近な港を基地にせざるをえない、つまりランペドゥーサあたりを。

 他方で、そんなぐあいに難民救助船が縦横に走っていればこそ、救助される見込みがあればこそ、やたら粗末な船というかゴムボートで地中海横断に乗り出させされるひとたちが大量発生する、というのもその通りだろう。

 とすると、『お前のその疑念自体、疑念を表出すること自体がこの政府の反移民政策を後押ししているのだ、従って人殺しの政府を支持するお前は人殺しなのだ!』という論法―最近、リベラルを称するひとたちに良く見られる論法でもあるが―によれば、『ゴムボートで地中海に乗り出しても、親切なシーウォッチのひとたちが救助してくれて、安全で安楽な西欧基準の船でヨーロッパにいけるよ!』という希望でアフリカ一帯のひとたちをリビアにひきよせ、海に駆り立てる、そんなシーウォッチの連中は間接的な人殺しなのだ。

 この矛盾に耐えながら、警察・軍と微妙に敵対しあいながらも暗黙のうちの協力をしたりし、そんな微妙な関係にヤクザ屋さんが介入して人身売買でこそっと儲けたり(ハデにやると見つかってお取り潰しになる)、そんな、ある程度安定的な関係は―

 ―かつてはあっただろうが、難民危機以来、決定的に破綻して今にいたる、といったところか。

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