その意味について―
ガンダムエース電子版で水星の魔女のスレミオ結婚発言を後から削除した件、これは下手を打ったと思う。一度公式から発表したものを修正するにはそれなりの理由と、何より先に説明が必要なのだがそれが無い。しかも同性婚という繊細な問題が絡むだけに、慎重に扱わなければならなかったのだが…
— 魔公子@C102 土曜 東ウ56b艦これ 日曜 西お11ひぐらし 8/18.19 台湾FF (@makoushi) July 28, 2023
スレミオが異性カップルなら「結婚おめでとう」とキャストスタッフから言及されて祝福されたよ。雑誌インタビューの電子版から「結婚した2人」のワードが削除されることはない誰からも言及されず電子版からしれっと結婚の文字が削除されたのは同性カップルだから創作が差別に加担したんだよ
— しょじょじ (@sho_jo_ji) July 28, 2023
スレミオの結婚、一度出たインタビューの文言をわざわざ削除したのがマジなら本当に「政治的」じゃないですかあんなに作中で結婚に関連するワード出して指輪も二人で付けて、終わった後にわざわざ「削除」するって相当ですよ「決定的に描かない」よりもさらに「避けてる」度合い増しませんか
— アミノ (@Aminoooooon6s) July 28, 2023
とまあ、ことは政治的な問題なのである!という意見が噴出している様子。
すべてのことは政治的である!というのは、それはそれで見解ですが、どういう意味で・どういう位相で政治的なのか、その分析の腕前は問われることだろうとはメモしておこう。
スレミオの結婚記述削除問題。何故そこまで頑なに?と思ったが、どっかのオタクのコメントで『人権屋の同性婚の政治的なアイコンにされたらたまったもんじゃない』と言うやつがあって、『あぁ、企業や制作側含めて一番ありえそうな基準の判断だな。』と負の方向で納得させられた。
— さいぱんだ!ヨ 😽~🎶 (@fAWyzuwjiUSsPpX) July 28, 2023
どうも、『ホントそれな!スレミオを人権屋に利用されるのマジで嫌なの同意だわ』的に捉えてイイネやリツイートしてる人もいるみたいだな。
— さいぱんだ!ヨ 😽~🎶 (@fAWyzuwjiUSsPpX) July 28, 2023
水星の魔女、本音レベルでは、例えば現実世界での同性婚制度推進論者に変にシンボルとかにされたくない、あたりの思惑はありそうなんだよな。
— ボマー (@bomber_bookworm) July 29, 2023
とまあ。
要は、これはガンダムの話なのであって、ガンダムに無関係な文脈に利用されるのは好ましくない、という判断もありえるわけである。
なにしろLGBT問題はホットにヒートにマーベラス!って感じに盛り上がるわけで、その一時の流行に消費されたくないなーというのは、息の長いシリーズに携わる者としては十分ありえる。…ここで「一時の流行とは何事だ!」と吹き上がるなら「そーゆーとこだぞ」というわけだ。今の日本のLGBT問題はLGBTと同定した者たちおよび「それに寄り添う」者たちの論題になってしまっている局面があり、おかまやホモという名称で自認しているひとびとをほったらかしに・敵対している点、課題として挙げるべきところがあり―。
そうした直近数年の盛り上がりとは距離を取ろうというのは商売の上でありえる。
昨夜少しした話だけど。水星の魔女が、いわゆる「毒親」問題を意識の片隅に置きつつ、毒親としてではなく親子問題にまで解体した上でお話を綺麗にまとめた件。どういう意識でいればその選択が出来るのかなぁ、と思って考えると、たぶん、数十年先まで鑑賞に耐えるものを作ろう、という意識なのでは。
— ボマー (@bomber_bookworm) July 28, 2023
ガンダムブランドで出される以上、シリーズの過去作が長い時を超えて愛されてる姿は見てる訳ですよ。時事問題的な要素はどうやっても入るにせよ、時代を超える普遍性も欲しい。短期の流行で消えるかもしれないキーワードに全振りは出来ない訳です。同性婚周りも似た意識で調整された可能性がある。
— ボマー (@bomber_bookworm) July 28, 2023
例えば10年後にも通用する作品を作るんだ、という志。そのために「今の時点」には過剰に合わせないようにするという選択。伝わりやすくはある今の流行語での理解を避け、普遍性のある要素に分解してから消化する。たぶん基本姿勢としてこれなんすよね。一事が万事。
— ボマー (@bomber_bookworm) July 28, 2023
同性愛を含む性的マイノリティの話も、いわゆる毒親の話も、10年前には世間の受け取り方の面では全く様相が違ってたんだから、10年後にはまた違う方向に変わってるはずなんですよ。同時に、性的マイノリティも、ある方向に問題のある親も、10年前どころか人類史に普遍的に居た。この違いの認識。
— ボマー (@bomber_bookworm) July 28, 2023
多分、これが正解。
まあその、ここ10~20年ほどの社会運動一般に対する信頼度の表明という点では政治的だなあとは言える。…深刻な問題ですけどね。「どうせおまえら、飽きたら捨てて他の論題で大騒ぎするだけだろ?」と言われているんですよ、これ…。「10年持つコンテンツじゃないだろ、それ」と…。
別の言い方。
作中で延々同性愛・同性婚を肯定しまくってきた作品でしょう。だから同性愛・同性婚を否定などしていない。むしろ積極的に肯定しているわけだ。そうした作品の、作品外のコメントで同性婚の表現を削除したことは、さて同性婚の忌避なのか、どうか。いや、その「同性婚」の文言に近寄ってくる運動家を忌避しているのではないか。
この際、真に否定・忌避されているのは何か・誰か。今現在のその種の運動・運動家なのではないか。
そしてそれが通ってしまったのは「所詮、長続きしない・勢力のない運動だよ」という判断なのではないか。
その判断に対して「それは同性愛・同性婚を否定しているということか」と吹き上がるなら、それは違う。スレミオの関係を美しくうたい上げている作品であることは確実だろう。そのほかカップルも、単に自然に、ただそうあるように、まったく普通に描かれているはずだ。
だから「否定・拒否されているのはお前らだ」ということになってしまうだろう。「私は当事者なのに!」という人がいるかもしれない。そうした場合には「せやから、お前の運動方針を忌避しているんだ」という回答になるだろう。
さらに言えば、ガンダム制作側は「我々こそが次世代の価値観の基礎となるであろう」と自信を持っているのだろう。
たかが10年もたない運動などと心中はできない。界隈が好きそうな反原発なり何なり、持たなかっただろう。そんなものと心中はできない。
そうではなく、10年以上愛される作品を我々は作った、それによって進む一般の理解の方が、より作品のメッセージを伝えるうえで重要なのだ―と。そういう判断だっただろうと。
そんな観点でいえば、今回の判断の政治性というのは「現行、元気に運動している運動家たちに対する(こりゃダメだ、という)評価」という点で政治的なのであって、この点から目を背けるのは運動家側に大変マズいとメモしておこう。
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