空野雑報

ソマリア中心のアフリカニュース翻訳・紹介がメイン(だった)。南アジア関係ニュースも時折。なお青字は引用。

北京「さわやか運動」(2)

2018-01-29 11:51:41 | ノート
「北京さわやか運動」(2018-01-25)」の件、日本語記事もあった様子:

AFP BB NEWS 出稼ぎ労働者の強制退去、揺らぐ中国経済の屋台骨 2018年1月28日 8:00 発信地:北京/中国

昨年11月に発生し、犠牲者19人を出した不法建造物の火災を受け、立ち退き計画の動きはいっそう強まった。街を徹底的にきれいにするためには計画の推進が必要なのだと当局は主張する

 この問題は確かに問題。しかも「君たちの命をまもるためなんだよッ!」というのはそれなりに正論。なにしろ、低所得者階層の集住地域で大火災が起こっても、死ぬのは、そりゃ主として低所得者のひとびとだ―いつぞやのロンドンの住宅タワーの火災を想起してもいい。

 だから、あんな悲劇を繰り返さないためにも、区画整理は必要なのだ―整理した後は適切に配分するであろう―というのは、そりゃまあ正論。もちろん、整理後の「適切な価格」は、そこに住んでいたひとたちの手の届く範囲にはないだろうが。

 自由主義諸国であれば、それでもなお、カネさえあればなんとかなるだろ?というイヤ気な平等があるにはあるが、中国の場合はおそらく、農村戸籍の問題も出てくるだろうしねえ…。

 2ぺーじめにある「米コーネル大学(Cornell University)のイーライ・フリードマン(Eli Friedman)准教授は、中国の大都市は「出稼ぎ労働者なくして機能しない」と述べ、「北京、上海、広州といった都市からその街の出身者以外を全員立ち退かせてしまっては、中国全土を支える経済的原動力が完全に崩壊する」と指摘している」。それゆえ、”3K仕事”用の”人材”は、それなりに維持するだろう。また、「経済的原動力」については、より高度な産業で食っていくため、人口集積の方法を”巧妙に立案し実行”している真っ最中だろう。若い高学歴者を都市中心部に配置し、その高度な能力で稼いでいく、という。

 AFPは、全面的にかなり批判的に論じる。

時事 中国、「首都浄化」を継続=出稼ぎ者の違法建築撤去 2018/01/24-17:11)

中国・北京市の人民代表大会(議会に相当)が24日開幕し、陳吉寧市長代理は政府活動報告で、首都にふさわしくない工場や市場、出稼ぎ労働者が多く暮らす違法建築住宅などを一掃する政策を継続する方針を表明した

陳氏は報告で「11・18重大事故は深刻な教訓をもたらした」と、火災を違法建築撤去を進める根拠として強調。製造業1992社、専門市場594カ所の閉鎖・移転など昨年の実績を誇示した上で、今年も4000万平方メートル以上の違法建築撤去などに取り組む目標を示した

 なんというか、非常に淡々と政府的・首都の政治エリートの公式見解的な事実を列挙してあり、冷静には読める。

北京では昨年11月の火災をきっかけに市当局が付近の出稼ぎ労働者を一斉退去させた粗暴な対応に非難が集中

 この「粗暴」に批判的な気持ちが集約されています…といったところか。

CNN Japan 北京市の人口、過去20年で初の減少 上海市でも人口減 2018.01.28 Sun posted at 17:31 JST

中国の首都・北京の昨年の人口は約2170万人で、前年比で0.1%減と過去20年で初めて落ち込んだ。国営メディアがこのほど報じた。
永住的な住民の人数が2万2000人減少した。中国政府は現在、出稼ぎ労働者を北京から追放する施策を進めている


北京市政府は2020年までに人口の上限を2300万人にする政策目標を掲げている。生活の質向上と主要な公共サービスの適切な維持などを理由にしている。この中で昨年末には構造的に危険で過多の居住者が入る民家などを摘発し、地方からの出稼ぎ労働者数千人を追い出してもいた

 こちらも記事表題に忠実に論点をならべてあり、特段、革命的ではない。

 先日より記事表題にしている「さわやか運動」の”元ネタ”はこれ:

横浜市江南区 歴史ひろい読み 広報こうなん1978年10月号 1978年(昭和53年)10月号 区内でもさわやか運動

住民と行政が一体となって街の美化を進めていこうというこの「さわやか運動」。10月15日には区にも本部を設置し、一斉に運動を展開してゆくことになりました

そのために自治会、町内会をはじめとする各住民組織と行政、交通機関など関係団体との総合的な協力体制づくりを進めます

 云々。こうした活動への主体的な参加により、”汚い”と認識されたものが排除され、もののついでで浮浪者からなにからリンチで排除したりとか、青木信人「「感情」をなくす子どもたち」などに書かれたり、Wikipediaに項目があるレベル:

日本語版Wikipedia 横浜浮浪者襲撃殺人事件

横浜浮浪者襲撃殺人事件(よこはまふろうしゃしゅうげきさつじんじけん)とは、1982年12月半ばから1983年2月10日にかけて、横浜市内の地下街や公園などでホームレス(浮浪者)が次々襲われ殺傷された事件。いずれも集団で執拗な暴行を加えられた結果である。
逮捕された犯人は横浜市内に住む中学生を含む少年のグループで、少年たちによる人権軽視の“浮浪者狩り”は社会に大きな衝撃を与えた
」。

逮捕されたのは「恐舞連合」と称するストリートギャング」ともあり、社会から排除されたという属性に限れば共通点をもつ人々に対して暴力を行使した点、なんといおうか、いじめられっこ選定の現場をやや大規模に再現した感がある。

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