耐震強度偽装設計問題で今日、国会の証人喚問などが行われます。
この事件、民間の問題は当然として、行政機関の責任をどうみるかが一つ焦点です。
国や自治体は、昨年秋にこの問題が発覚したとき、最初は当事者の責任だと知らん振りでした。その後、一部に、補助するとか援助するとかに方針転換。税金で手当てしようと言うのですから、釈然としませんね。
この方向づけは、偶然にも昨年に出た二つの裁判の判決が作用して、『役所が訴えられたら大変』というもの。
この考え方は、何も、今回のマンションやホテルなどの違法建築だけでなく、住宅建築全般に通じていることなので紹介します。
● 昨年6月24日の最高裁判決では、建築確認事務は地方公共団体、民間指定検査機関のどちらがやっても「行政行為」となります。そうであれば国家賠償法第1条「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失にって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」という原則に該当します。
● 昨年11月30日の横浜地裁判決は、地下室マンションを巡って「建築基準法に違反しており、確認処分は違法」として、民間の指定確認検査機関「東京建築検査機構」(東京都中央区)が行った建築確認を取り消しました。
住民は、民間が確認したものでも横浜市に責任があるとして、市に損害賠償を求めていましたが、裁判所は「検査機関に故意や過失があった場合、確認の権限を持つ横浜市が賠償責任を負う」との判断を示しました。ただ、今回の確認処分に「故意や過失はなかった」として賠償請求は棄却しました。
● つまり、地方公共団体や国を被告とした国家賠償訴訟が提起される可能性があります。
しかも、横浜地裁の事件とは、審査の経緯が全く違います。
賠償となった場合、地方公共団体は財政が苦しいので、検査機関を指定した国にも責任があるとして国と地方公共団体の間でも駆け引きがされるでしょう(実際にそうなっていますね)。
● 判例 平成17年06月24日 最高裁第二小法廷決定
平成16年(行フ)第7号 訴えの変更許可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
判決全文はこちら
要旨: 株式会社東京建築検査機構(「指定確認検査機関」)は,横浜市内に建築することが計画されていた大規模分譲マンションである本件建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであること等につき同項所定の確認をした。
相手方らは,本件建築物の周辺に居住する者で、本件確認の違法を原因とする損害賠償を求めた。
・・・以上の建築基準法の定めからすると,同法は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認に関する事務を地方公共団体の事務とする前提に立った上で,指定確認検査機関をして,上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下において行わせることとしたということができる。そうすると,指定確認検査機関による確認に関する事務は,建築主事による確認に関する事務(同法4条,地方自治法2条8項)の場合と同様に,地方公共団体の事務であり,その事務の帰属する行政主体は,当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。
したがって,指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は,指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たるというべきであって,抗告人は,本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たるということができる。
● 横浜地裁平成17年11月30日判決
平成16年(行ウ)第18号 建築催認処分取消請求事件
判決全文はこちら
(上記最高裁判決を前提に)・・・被告検査機構が行った本体各確認処分に係る本件建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は被告横浜市であるから,被告検査機構が行った本件確認処分が原告らとの関係において,国家賠償法上も違法と評価され,その点に故意又は過失があって賠償を要するものであれば,被告横浜市は国家賠償法1条1項の「公共団体」としての賠償責任を負うというべきである。
(2)故意又は過失の有無について
前記3・・のとおり,本件確認処分がその取消訴訟において違法と判断されたのは,被告検査機構が,本件建築計画が本件各規制に適合するかどうかの判断に当たって,その前提ないし基準となる「建築物が周囲の地面と接する位置」の認定を誤ったことによるものである。しかし本件のように・・・被告検査機構が,本件建築計画が本件各規制に適合するかどうかの判断に当たって,その前提ないし基準となる「建築物が周囲の地面と接する位置」の認定を誤ったとしても,それは従前から支持されてきた実務の運用ないし見解に従ったものであり,一定の合理性があるというべきである。してみると,被告被査機構のした上記処分については,それが国家賠償法上において違法と評価されるものであるか否かを問わず,被告検査機構には故意又は過失が存しないというべきである(故意又は過失を認めるべき証拠はない。)。
したがって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの被告横浜市に対する請求は認められない。
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今回、横浜地裁の判決を探していて、 「欠陥住宅の救済と予防をめざす弁護士・建築士・研究者・市民の全国ネットワーク」 という団体に気づきました。
欠陥住宅全国ネットのホームページへようこそ!
役立つかもしれませんね。
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