母子加算復活の裏で高校就学費等廃止なら公約違反!鳩山首相の決断を求める緊急声明
2009-10-21 15:00:00 / Weblog 2009年10月21日
母子加算復活の裏で高校就学費等廃止なら公約違反!
鳩山首相の決断を求める緊急声明
生活保護問題対策全国会議、しんぐるまざあず・ふぉーらむ、多重債務による自死をなくす会、神戸公務員ボランティア、特定非営利活動法人ほっとポット、生活保護支援九州ネットワーク、近畿生活保護支援法律家ネットワーク、東海生活保護利用支援ネットワーク、一般社団法人自立生活サポートセンターこんぱす、全国公的扶助研究会、笹島診療所、愛知派遣村実行委員会、生存権裁判を支援する全国連絡会、全国生活と健康を守る会連合会
鳩山首相が長妻厚生労働大臣に対して、生活保護・母子加算の年内復活を指示されたとの報道がされた一方、その引き替えで生活保護受給世帯に対する高等学校等就学費や学習支援費を廃止する財務省の意見が根強いとの報道がされています(2009年10月12日読売新聞等)。
仮にこれが事実なら、何のための母子加算復活なのか、母子加算の早期復活を求めてきた私たちとしては到底容認できません。「コンクリートではなく、人間を大事にする政治」「子育て・教育に税金を集中的に使う」という「マニフェスト」にも真っ向から反するものであり、新政権発足間もない今、最初の公約違反と言わざるを得ません。
高校等就学費や学習支援費は母子加算廃止の代償ではない
母子加算(削減前の加算月額は1級地で2万3260円)は、ひとり親ゆえのハンディ、特別需要(例えば、一人で親二人分の育児、家事等をしなくてはならない。食事の準備ができずできあいのものを買ったり外食もあるだろうし、精神的、肉体的な疲れを癒すために休息も必要となるなど)に対応するものとして、1949年に創設された加算であり、政府においても、同様の趣旨が確認されていました(昭和55年11月17日中央社会福祉審議会生活保護専門分科会・中間的とりまとめ)。
これに対して、高校等就学費(平均15,441円/月)は、2004年3月16日の中嶋訴訟(高校就学費目的での保護費等を原資とする学資保険への加入の可否が13年間にわたって争われた事件)最高裁判決での原告勝訴を受けて、2005年度から創設されたものです。その支給対象は、高校生のいる保護利用世帯であって、母子世帯に限りません。高校等就学費の創設は、たまたま母子加算廃止と時期が重なっただけで、趣旨も支給対象も異なり、母子加算の廃止とは全く関係がないのです。
また、2009年7月に創設された学習支援費(参考書代など。小学生2,560円~高校生5,010円)も、生活保護世帯の貧困の再生産を防ぐ趣旨で導入されたもので、支給対象は母子世帯に限らず、これも母子加算廃止とは関係がありません。
したがって、母子加算復活に伴い、高校等就学費や学習支援費を廃止する理論的整合性は全く存在しません。
「高校授業料無償化」では救われない
民主党は、マニフェストで、「公立高校の授業料を無償化し、私立高校生には年12~24万円を助成」するとし、「高校授業料の実質無償化」を唱っています。しかし、この公約はまだ実現しておらず、先行して生活保護受給世帯に対する高校等就学費や学習支援費を廃止することに合理性はありません。
しかも、高校では授業料以外の学習費用の方が多いことに留意が必要です。すなわち、公立高校において学校に支払う平均学習費は年間約35万円ですが、うち①授業料は約11万円に過ぎず、②残りの約24万円は教科書代、制服代、修学旅行費等の費用です。また、③学校外の教育費(参考書や塾等)に平均約17万円かかることからすると、仮に授業料が無償となっても、②③の計41万円の負担は残ることとなります。
将来高校授業料無償化が実現したとしても、その暁には、むしろ生活保護受給世帯に対する「高校等就学費」の予算を現在月額数千円と手薄な「学習支援費」に振り替えることこそが、「貧困の世代間連鎖」を断ち切るためには求められています。
総選挙前の民主党の公約
総選挙前、当時の野党4党が「母子加算復活法案」を上程した際、当時の自公政権や厚生労働省が「高校就学費や学習支援費が代償としてある」と主張したのに対し、野党4党は私たちとともに「それは代償ではない」と反論していました。
総選挙前、鳩山首相は、当時の麻生首相との党首討論の締めくくりで、「小学校に入りたてのお嬢ちゃん、お母さんが生活保護、母子家庭、2万円切られてしまった。そこで『もう私は高校に行けないのね』。その話、聞いたら涙が出ましたよ。修学旅行に行きたくても行けない、高校行きたくても行けない。そういう人がたくさん今いるんです。これが日本の現実なんです。」「こういう方を救おうじゃないですか。居場所を見いだされる国にしようじゃないですか。アニメの殿堂のお金があれば、なんで生活保護の母子加算に戻してあげないんですか。そういう政治をやりたいんです。やろうじゃないですか。」と訴えました。
総選挙前、民主党は、そのマニフェストで「国民の生活が第一」「暮らしのための政治」を掲げ、「母子家庭で、修学旅行にも高校にも行けない子どもたちがいる。」「民主党は、すべての子どもたちに教育のチャンスをつくります。社会全体で子育てする国にします。」「すべての予算を組み替え、子育て・教育…に税金を集中的に使います。」と訴えました。
公約実現のために鳩山総理の決断を!
母子加算を復活させる引き替えに、その財源を同じ生活保護受給者の高校等就学費や学習支援費の廃止によって捻出するというのであれば、これまでの政権のやり方とどこが違うのでしょうか。それでは、「コンクリートも削り、人間に対する予算も削る政治」になってしまいます。
私たちは、新政権が「暮らしのための政治」という公約を実現することを心から期待し、固唾をのんで見守っています。私たちは、公約実現のために鳩山総理が、そのリーダーシップを発揮した決断をすることを強く求めます。
以 上 |