tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

消費者に求められる意識と行動

2013年04月12日 11時20分52秒 | 経済
消費者に求められる意識と行動
 振り返ってみれば、日銀の政策変更で円安が実現してから、まだ漸く1週間なのに、今はもう、誰も日本経済が円高デフレに押し潰されるだろうと心配している人はいないのではないでしょうか。$1=¥100は全く新しい世界を拓きました。
 まさに円高デフレに呻吟した「失われた20年」は一体何だったのかという感じです。

 ただ、忘れないで頂きたいのは、「過度な円高を強いられることは、国民をこれだけ苦しめる という事実です。言い換えれば為替レートの恐ろしさです。

 ということで、前回は企業行動について、そして、今回は消費者はどう考え、いかなる行動を取るべきかを一寸考えてみたいと思います。

$1=¥100はそろそろ日本の国内物価が海外物価と面合わせする水準でしょう。
 日本経済はデフレを脱却して、そろそろインフレという環境に入ります。
 日本の国内物価水準が国際物価水準に面合わせになれば、もうデフレは起き得ませんから(海外からより安いものが入って来ませんから)、今後は、出来るだけインフレをひどくしないことが大事になります。
 もちろん政府が「2パーセントのインフレターゲット 」と言っているのですから、2パーセントまではいいということにしましょう。

 日本の輸入依存度は10~15パーセントですから、その分(輸入原材料、輸入品など)のコストは従来価格に比べ20パーセント上昇します。円高の時、輸入価格が下がった事の逆です。その分だけ、ガソリンや灯油、輸入原材料を多用するトイレットペーパー、豆腐、うどん、パンなどが値上がりします。
 ただし、加工や輸送のための人件費などの国内コストは上がりません。上がるのは輸入原材料費分だけです。それ以上上がるのは便乗値上げでしょう。

 正確に言えば、日本の物価水準が、国際水準と同じ($1=¥105前後?)になった後は、輸入品の価格上昇は、原則国内物価に跳ね返りますから、2割の円安×1割の輸入依存度=2パーセントは理論上消費者物価の上昇になります。インフレターゲットは2パーセントですから、消費者は、便乗値上げなどに厳しく目を光らせなければなりません。

 最も留意すべきは、円安によって輸出産業や、輸入品競合産業で生まれる余裕を、安易に賃上げして人件費(最大の国内コスト)の上昇に使ってしまわないことでしょう。これは、円安で生じた経済成長への可能性を、インフレ発生で浪費してしまうことですから。

 そこでどうすればそれが防げるかです。
 円高で発生する日本経済(主に企業)の余裕は、あくまで一時的なものです。長年の我慢に対して、国際投機筋が賠償金を払ってくれたようなものです。
 問題はこれを飲み食いに使うか、経済立て直しに使うかです。そして、ここは賃上げで楽をするのではなく、もう1つ我慢して、将来の日本経済発展のための研究開発、財・サービス生産の活発化、それを支える人間への投資である教育訓練といった前向きのものにこそ活用すべきでしょう。それこそが日本経済の安定成長復帰への早道です。

 その結果、年々の経済成長が現実のものとなりGDPが増えた時、その増加に応じた(正しくはその増加を生み出した生産性の上昇に応じた)賃金上昇が可能になるのです。
 インフレを2パーセントまで許容するのなら、生産性上昇率より、2パーセント大きい賃金上昇率にすれば、2パーセントのインフレターゲットは完成です。

 円高から円安に転換し、デフレからインフレに変わるという正に過渡的なプロセスで、今まで経験しなかったことが起こりますが、その際、決して慌てず、冷静に賢く対処して、このデフレからインフレへの180度の転換を見事に切り抜けて見せられるかどうか、日本人の知恵と行動能力が問われているのです。