我がChronicle.Ⅸ-再甦へ-
母の死と云う否応なしに齎された現実に因って、押し寄せる、もう永遠に”子供には戻れない”という類なき淋しさと切なさと儚さを契機に、三十年に亘る定型詩の成果を「道、なかば、」という歌集に纏めて一区切りつけると、間髪を置かず、僕はその哀しみとの引き換えのように、その侘しさを埋めるように「ぽえむ」に復帰する。
二十代に自費出版したと思い込んでいた第4詩集”明日の鏡”の原稿を、母が居なくなって無人になった故郷の家の整理中に発見したのだ。果たしてそれらは無事に出版されて陽の目を見たのか?遠い記憶を辿ってみても記憶の行き着く先は茫洋としたまま。
其処で手始めに復帰への第一弾として、その原稿に残存する当時の詩に、それ以後の20年余に僅かに書き溜めていた数10篇の詩を加え、改めて詩4「明日の鏡」として独立させたのだった。
その出来事は、実に1979年から2010年に及ぶ30年もの年月を超える詩の空白の隙間を埋めるように、詩に、詩を書くことを僕に促し、その本然に復帰した紛れも無き瞬間だったような気がする。
想えば、短歌の師でもあった母がそのように促がしてくれたのかも知れぬ契機を通過して僕は、劃して翌年の誕生日の日付で詩6「再甦」を生み出し、以後は毎年のように”多作こそ才能!!”と断じてくれた恩師の言葉を躊躇わず実行してゆく。