明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(346)「除染に限界痛感」・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(6)

2011年12月04日 16時30分00秒 | 明日に向けて(301)~(400)
守田です。(20111204 16:30)

すでにお知らせしたように、10月18日~20日、福島市内で行われている放射
能除染・回復プロジェクトに参加し、そのときのことを何回かに分けて記事
にしましたが、そのときにお世話になった福島市御山地区に在宅の深田和秀
さんが、東京新聞の取材に応じて、除染の問題点を語りました。記者さんが
要点を実によくまとめてくださっているので、紹介することにします。

東京新聞には申し訳ありませんが、ここに掲載するのは、福島市内の方々、
とくに記事の中に出てくる渡利地区や、御山地区の方々に読んで欲しいから
です。僕も深田さんに案内されて、記事中に出てくる御山小学校の登校風景
を取材に行き、それを記事にしましたが、その後に何人か、この小学校に
子どもさんを通わせている方からの相談のメッセージをいただいています。

そのうちの一つ。ブログ上に投稿していただいたものとそれへの返答を紹介
します。

*****

悩んでいます (matu) 2011-11-14 13:09:28
御山小に子供を通わせています。
マスクもしないで、夏には半そで半ズボンで過ごしていました。
県や市の説明会では今現在は3月の爆発時とは違い放射性物質が大気中に舞っ
ていることは無いので、マスクの必要もない聞いていました。
それが、秋になった頃、学校で配られた小児科医を呼んでの説明会の案内の
片隅には、『外出から戻ったら衣服を脱ぎシャワーを浴びましょう』との文
字が・・・
こういった事の繰り返しで、あれから8ヶ月もすごしました・・
今更ですが、やっぱり変ですよね。

僕は次のようにご返答しました。

matu様
御山小学校にお子さんが通っておられるのですね。ぜひマスクを着用させて
あげてください。車で送り迎えされた方がよりベターですし、避難をされた
方がずっといいです。可能な限りの避難をお勧めします。

マスクの必要もないとはとんでもないことです。通学路上に、放射線値が高い
ところがたくさんあります。そこには放射性物質があります。マスクをする
しないだけでも、内部被曝量は変わってきます。

これから福島は乾燥する上に、吾妻降しが吹くと聞いています。空っ風は、
砂を舞い上げ、放射性物質も飛び散らせます。山からも飛んできます。きわ
めて危険です。

「外出から戻ったら衣服を脱ぎ、シャワーを浴びる」ことも大事ですが、その
場合の衣服の処理なども大変。その場から離れたほうがずっと生活しやすいです。

もちろん避難はハードルが高くて大変ですよね。どうかmatuさんとお子さんに
とっての良い条件が揃うようにお祈りしています。

*****

また昨夜、郡山在住と思われる方から以下のような投稿がありました。

*****

除染 (カナリア) 2011-12-03 19:22:05
福島県郡山市では、町会50万円が支給され”除染”が住民の手により、現在
進められています。
地域によっては、班長が一軒々まわり、参加できないとなると「なぜ?どうし
?」の追求の嵐!異常事態。赤紙!!!戦時下のマインドコントロール。集団心理。
7~10μSv/hの土嚢袋を集積場所に一般市民である私達が運ぶのです。
また、全国から除染活動に参加してくださっている方々に対して、「ここの住民
が恐がるから、マスクをなるべくしないように!」等と指導する人間。
日本の大人は狂っている!!!もう、誰も止めることができない!

*****

深田さん自身は、記事の最後に次のように述べられています。

「深田さんは除染の限界を痛感したという。「完全な除染は困難で不可能に近い」。
だが、住民はいる。どうすればよいのか。「子どもや妊産婦を県外に一時避難させ
て、無用な被ばくを避けるべきだ。まずはそこから始めるべきじゃないのか」」

まったく同感です。
寒くなってきた福島で、子どもたちの被ばくに日夜胸を痛めて走り回っている
深田さんに思いを馳せつつ、記事を閉じます。以下、深田さんを取材した東京
新聞の記事をお読みください。

*****************

除染に限界痛感
高線量落ち葉「きりない」 洗浄水流れ「火種」
数値下げる思惑? 観測地は福島市実施
東京新聞11月26日

仮置き場の確保の難しさに加え、間もなく雪という大敵も現れる。放射性物質
の除染を急ぎたい福島市の住民の焦りは募るばかりだ。作業に挑んだ住民の一
人は、除染の限界に打ちのめされたという。本来なら、汚した者が即座に除去
すべきだが、現実はその当たり前とはほど遠い。「年内の冷温停止」「2年後の
被ばく線量半減」。事故の幕引きを急ぐ政府のお題目ばかりがしらじらしく響く。
(出田阿生)

「あんなに住民が除染したのに、もうこんなに落ち葉が降り積もった。いくら
やっても、きりがない」。高い汚染で知られる福島市渡利地区。市立渡利中学
校わきの路上で、そこから車で15分ほどの同市御山地区に住む深田和秀さん
(63)はため息をついた。

25日の気温は昼間でも5度くらい。赤や黄に色づいた葉が氷雨で落ち、道ばたに
吹き寄せられていた。今年は山の紅葉を喜べない。汚染された落ち葉が放射線
量を上げるからだ。

深田さんは市民団体「放射能除染・回復プロジェクト」の一員。同団体は京都
精華大学の山田国広教授(環境学)を中心に、福島大や大阪大の教員らと福島
市民で構成している。今年五月から、住民の手でできる除染方法を探ってきた。

渡利地区の公共施設わきの側溝で、深田さんが線量計をかざす。表示された数
値がぐんぐん上がっていく。底に生えた雑草の近くでは、毎時68.51マイクロ
シーベルト(年に換算すると600ミリシーベルト)にもなった。地上約1メート
ルで毎時2マイクロシーベルトほど。同地区では避難者が相次いで子どもが減り、
すでに閉鎖された保育所もある。

ところが、福島市が空間線量の定点観測をしている渡利市所前の公園では、立ち
入り禁止のロープが。表土をはいで除染作業を実施中という。「9月2日に毎時
2.25~1.47マイクロシーベルトだったのが、今月2日には0.98に減った。計測地
点を除染するなんて、数値を下げたいからとしか思えない」(深田さん)

「除染プロジェクト」の実験では、洗い流す方法は最初から断念した。流れ出
した水は新たなホットスポットをつくり、いずれ川や海に流れて汚染を拡大さ
せるからだ。まずは庭の表土をはがす方法に挑戦した。

土ぼこりの飛散を防ぐため、市販の合成洗濯のりを薄く土にかけた。そのうえで、
固めてははぎ取った土を袋に詰め、穴を掘って埋めた。

しかし住宅地は1メートルほど掘ると、コンクリート片などが出てきて堀り進め
られない。環境省の汚染土埋め立て基準では「表土を30センチかぶせること」と
なっているが、せいぜい10センチほどしかかぶせられなかった。

住宅の外壁や屋根、雨どいなどの除染で室内の放射線量を下げる実験もした。
深田さんの宅でも実施。屋根瓦に合成洗濯のりを塗り、園芸用の布をかけてから
はがした。

ところが線量があまり落ちない。詳しく計測すると、屋根瓦の隙間に放射性物質
が入り、取れていないと分かった。

「よく水で高圧洗浄しているが、表面の放射性物質は雨で流れており、ほとんど
意味がない。セシウムはいったんコンクリートなどにこびりつくと結合してしま
い、容易にはがれない」


住民に自衛頼み
被ばく避け車で送迎 東電・国何もしない

深田さんは市街地に近い山々を見上げながら、「放射性物質の供給源がこんなに
近くにあったら、どんなに除染してもいたちごっこだ」と話す。

庭土の除染実験をした御山地区の住宅の空間線量は現在、毎時0.7~1マイクロシー
ベルト前後。自分の家だけ除染しても、隣家の木の葉が落ちてくれば、数値は上が
る。ローンの残った家を諦め、県外に避難した人もいた。

市立御山小学校を訪れてみた。通学路には雑草が生い茂り、その一角は5月に側溝
脇で毎時180マイクロシーベルトを計測している。校門には「今日の空間線量」と
書かれた札。下校時、学校の駐車場は車であふれかえっていた。

子どもを乗せた軽自動車が通り過ぎる。「歩いて数分の距離でも保護者が安全の
ために子どもを送迎している」と深田さん。そして校庭ではマスク姿の女性数人が、
落ち葉をほうきで集めてはごみ袋に入れていた。

「あれは学校の校務員じゃなく、母親たち。子どもが少しでも被ばくしないように
と、毎日落ち葉を清掃している。東京電力や政府はなすべきこともせず、住民の
善意にのっかっている」

福島市放射線総合対策課によると、市内でも大波地区は10月から除染作業を本格的
に始めた。汚染土砂などの仮置き場が確保できたためだが、これから積雪や凍結が
予想され、年内には終わらない見通しという。

渡利地区では7月にモデル事業を実施した。観測地点の公園では表土を削っていたが、
担当者は「仮置き場が確保できておらず、本格的にはしていない」と説明した。

深田さんは除染の限界を痛感したという。「完全な除染は困難で不可能に近い」。
だが、住民はいる。どうすればよいのか。「子どもや妊産婦を県外に一時避難させ
て、無用な被ばくを避けるべきだ。まずはそこから始めるべきじゃないのか」

以上

以下のブログから紙面がみれます。
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/112612-a782.html
http://heiheihei.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/112622-eaa7.html

***************

これまでの除染活動に関する記事もまとめておきます。

明日に向けて(301)福島の現状は厳しい・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(1)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c0d94dc74a458f49aedd63cf05269777

明日に向けて(303)屋根の放射能は容易には落ちない!・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(2)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/731ed06108179654ab6d88c4646aa634

明日に向けて(304)除染するほど、「住めない」と思う・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(3)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/3ebae533afd6d0f6a86b9fd668af6153

明日に向けて(306)荒木田さんへの共感の声が続々と・・・放射能除染・回復プロジェクトに参加して(4)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/fb3d13f7a57e2316575db56007ff1124

明日に向けて(308)人の悪意とどう向き合うのか。(続荒木田さんへのコメント)・・・除染に参加して(5)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/d238f454b6401dbfc3a377fd632b7ab8
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