守田です。(20111219 23:30)
16日の冷温停止宣言の前になりますが、保安院がとんでもない開き直
りを公言しました。これまで福島第1原発からは、大量の放射能汚染水
が意図的に放出されたり、漏洩したりして、流れ込んでしまっています
が、保安院がなんとこれらを法的に「ゼロ」扱いしてきたことが、東京
新聞の取材で分かりました。
しかも保安院は、今後もこれと同じことを続けると述べています。一体
これでどこが冷温停止だといえるのでしょうか。いや、問題は冷温停止
かどうかではなく、海への汚染物の放出を、これまで勝手に「ゼロ」と
みなし、今後もそれを続けるというのは、あまりに犯罪的な行為に他な
らないという点にあります。
記事を少し紹介すると、原発には次のような規制があります。
「原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物
質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、
セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計
算される。」
つまり年間2200億ベクレルまでは海に出してもいいことになっている
わけで、これ自身が低線量被曝の源として、厳しく批判されなければ
ならないことですが、記事は4月2~4日にかけてあった漏洩や放出だ
けでも4700兆ベクレルで、上限値のなんと2万倍になっていることを指
摘しています。
この4700兆ベクレルという数値は東電が試算したものですが、そもそも
これら自身、かなり低く見積もられているという批判が各国の研究機関
から出ています。フランスの政府系の放射線防護原子力安全研究所(IR
SN)は、3月21日から7月半ばまでで、放射性セシウム137だけで、東電
の試算の20倍の2.71京ベクレルが放出されたと指摘しています。
あまりに数値が大きくなりすぎて、感覚が追いつかなくなりがちですが
それではいけません。こんなにとんでもない量の放射能で海を汚染しな
がら、「緊急事態」をたてに、それをゼロとみなす大変な居直りがなさ
れようとしているわけで、こんなことが許されるのなら、どんなに海を
汚そうがかまわないことになってしまいます。
しかも、今後もこの態度を続けると公言しています。まさに開いた口が
ふさがらないというか、そんなことを公言できる神経そのものが、私た
ちには理解ができませんが、実際に保安院は平気でそのようなことを口
にしています。私たちはこれ自身が、大変な危機であることを認識する
必要があります。
明日に向けて(358)で論じた冷温停止宣言の背後にある危機の2点目に
こうした汚染水問題があることを、細川弘明さんの指摘に基づきつつ
紹介しましたが、まさにどれほど汚染水を垂れ流そうと「ゼロ」扱いに
する=どれほど流してもいいことにするというとんでもないことが既定
方針化されつつあるのです。
しかも東京新聞がいち早く報じてくれたものの、こんなとんでもないこ
とが、大ニュースにならない。そのことがますます保安院の開き直り
体質を強めています。そしてこうしたことと渾然一体に、今なお、避け
るべきものが避けられずに被曝が進行しているのがこの国の現状です。
こんな「ゼロ」扱いなど絶対に認めることはできません。あまりの大嘘
や開き直りが続いていますが、けして慣れてしまわずに、批判の声をあ
げ続けましょう。今、問われているのは、私たち市民の側からの、絶え
ることのない持続的な批判とウォッチです。
**************
保安院 海への汚染水 ゼロ扱い
東京新聞 2011年12月16日 07時06分
福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、
経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出
量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や
意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停
止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制
をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。
原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質
の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、
セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計
算される。
しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているの
が見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は
建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。
これら二件の漏出と放出だけで、原発外に出た放射性物質の総量は四七
〇〇兆ベクレル(東電の試算)に達し、既に上限値の二万倍を超える。
試算に対しては、国内外の研究機関から「過小評価」との異論も出ている。
今月四日には、処理済みの汚染水を蒸発濃縮させる装置から、二六〇億
ベクレルの放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れ出した。
さらには、敷地内に設置した処理水タンクが来年前半にも満杯になる見込
み。この水にもストロンチウムが含まれている。東電はできるだけ浄化し
て海洋放出することを検討している。漁業団体の抗議を受け、当面は放出
を見送る方針だ。
保安院は本紙の取材に対し、事故への対応が最優先で、福島第一は損傷で
漏出を止められる状態にない「緊急事態」だった点を強調し、総量規制を
適用せず、四七〇〇兆ベクレルの漏出をゼロ扱いする理由を説明した。
「緊急事態」に伴う特例扱いは「事故収束まで」続くとも説明したが、具
体的な期間は「これからの議論」とあいまい。
今後、仮に放射性物質を含んだ処理水を放出したとしても、ゼロ扱いを続
けるという。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011121690070643.html
16日の冷温停止宣言の前になりますが、保安院がとんでもない開き直
りを公言しました。これまで福島第1原発からは、大量の放射能汚染水
が意図的に放出されたり、漏洩したりして、流れ込んでしまっています
が、保安院がなんとこれらを法的に「ゼロ」扱いしてきたことが、東京
新聞の取材で分かりました。
しかも保安院は、今後もこれと同じことを続けると述べています。一体
これでどこが冷温停止だといえるのでしょうか。いや、問題は冷温停止
かどうかではなく、海への汚染物の放出を、これまで勝手に「ゼロ」と
みなし、今後もそれを続けるというのは、あまりに犯罪的な行為に他な
らないという点にあります。
記事を少し紹介すると、原発には次のような規制があります。
「原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物
質の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、
セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計
算される。」
つまり年間2200億ベクレルまでは海に出してもいいことになっている
わけで、これ自身が低線量被曝の源として、厳しく批判されなければ
ならないことですが、記事は4月2~4日にかけてあった漏洩や放出だ
けでも4700兆ベクレルで、上限値のなんと2万倍になっていることを指
摘しています。
この4700兆ベクレルという数値は東電が試算したものですが、そもそも
これら自身、かなり低く見積もられているという批判が各国の研究機関
から出ています。フランスの政府系の放射線防護原子力安全研究所(IR
SN)は、3月21日から7月半ばまでで、放射性セシウム137だけで、東電
の試算の20倍の2.71京ベクレルが放出されたと指摘しています。
あまりに数値が大きくなりすぎて、感覚が追いつかなくなりがちですが
それではいけません。こんなにとんでもない量の放射能で海を汚染しな
がら、「緊急事態」をたてに、それをゼロとみなす大変な居直りがなさ
れようとしているわけで、こんなことが許されるのなら、どんなに海を
汚そうがかまわないことになってしまいます。
しかも、今後もこの態度を続けると公言しています。まさに開いた口が
ふさがらないというか、そんなことを公言できる神経そのものが、私た
ちには理解ができませんが、実際に保安院は平気でそのようなことを口
にしています。私たちはこれ自身が、大変な危機であることを認識する
必要があります。
明日に向けて(358)で論じた冷温停止宣言の背後にある危機の2点目に
こうした汚染水問題があることを、細川弘明さんの指摘に基づきつつ
紹介しましたが、まさにどれほど汚染水を垂れ流そうと「ゼロ」扱いに
する=どれほど流してもいいことにするというとんでもないことが既定
方針化されつつあるのです。
しかも東京新聞がいち早く報じてくれたものの、こんなとんでもないこ
とが、大ニュースにならない。そのことがますます保安院の開き直り
体質を強めています。そしてこうしたことと渾然一体に、今なお、避け
るべきものが避けられずに被曝が進行しているのがこの国の現状です。
こんな「ゼロ」扱いなど絶対に認めることはできません。あまりの大嘘
や開き直りが続いていますが、けして慣れてしまわずに、批判の声をあ
げ続けましょう。今、問われているのは、私たち市民の側からの、絶え
ることのない持続的な批判とウォッチです。
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保安院 海への汚染水 ゼロ扱い
東京新聞 2011年12月16日 07時06分
福島第一原発事故で、何度も放射性物質を含む汚染水が海に漏出したが、
経済産業省原子力安全・保安院は「緊急事態」を理由に、法的には流出
量は「ゼロ」と扱ってきたことが本紙の取材で分かった。今後、漏出や
意図的な放出があってもゼロ扱いするという。政府は十六日に「冷温停
止状態」を宣言する予定だが、重要な条件である放射性物質の放出抑制
をないがしろにするような姿勢は疑念を持たれる。
原子炉等規制法により、電力事業者は、原発ごとに海に出る放射性物質
の上限量を定めるよう決められている(総量規制)。福島第一の場合、
セシウムなどは年間二二〇〇億ベクレルで、年度が変わるとゼロから計
算される。
しかし、四月二日に2号機取水口近くで高濃度汚染水が漏出しているの
が見つかり、同四日には汚染水の保管場所を確保するため、東京電力は
建屋内のタンクに入っていた低濃度汚染水を意図的に海洋に放出した。
これら二件の漏出と放出だけで、原発外に出た放射性物質の総量は四七
〇〇兆ベクレル(東電の試算)に達し、既に上限値の二万倍を超える。
試算に対しては、国内外の研究機関から「過小評価」との異論も出ている。
今月四日には、処理済みの汚染水を蒸発濃縮させる装置から、二六〇億
ベクレルの放射性ストロンチウムを含む水が海に漏れ出した。
さらには、敷地内に設置した処理水タンクが来年前半にも満杯になる見込
み。この水にもストロンチウムが含まれている。東電はできるだけ浄化し
て海洋放出することを検討している。漁業団体の抗議を受け、当面は放出
を見送る方針だ。
保安院は本紙の取材に対し、事故への対応が最優先で、福島第一は損傷で
漏出を止められる状態にない「緊急事態」だった点を強調し、総量規制を
適用せず、四七〇〇兆ベクレルの漏出をゼロ扱いする理由を説明した。
「緊急事態」に伴う特例扱いは「事故収束まで」続くとも説明したが、具
体的な期間は「これからの議論」とあいまい。
今後、仮に放射性物質を含んだ処理水を放出したとしても、ゼロ扱いを続
けるという。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011121690070643.html