明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(167)日本軍による性暴力被害にあった台湾のおばあさんたちの写真展を行います。

2011年06月23日 02時30分00秒 | 明日に向けて6月1~30日
守田です。(20110623 02:30)
 
明日(22日)より、京都の法然院で、旧日本軍による性奴隷問題被害にあわ
れた台湾のおばあさんたちの写真展を開催します。26日には同じ場所で、
日本から台湾のおばあさんたちのもとに、長く通い続けてきた柴洋子さんの
講演会も行います。お近くの方に、ぜひ写真を見に来て欲しいと思います。


僕は原発の問題以外にも、いろいろな活動に関わっています。1つはピース
ウォーク京都を中心とした、戦争に反対する活動。911事件をきっかけに歩み
出した行動です。特にアフガン現地で医療活動を行い、井戸を掘り、運河も
作り、農場の再生を目指している、中村哲医師を中心としたペシャワール会
を支援する行動や企画を繰り返してきました。

今年の秋は911から10年、アフガニスタン空爆開始10年です。このアフガン戦争
でも、その後のイラク戦争でも、いやその前の湾岸戦争でも、米軍は劣化ウラン
弾を大量に使用しました。広範な地域で爆撃による被害が生じると同時に、
被曝による被害が発生しています。劣化ウラン弾はリビアでも使われました。

それからも含めて、僕は福島の事故と、アフガン・イラクなどでの戦争は、深い
ところでつながっていると思っています。もちろん、広島・長崎に被ばくも。
そしてパレスチナでの暴力も。

平和への願いと、事故に対して僕ができるだけの努力を続けていきたいという
思いは深くつながっています。


そして戦争について、もうひとつ僕が参加してきたのが、旧日本軍の侵略行為を
とらえ返すこと、とりわけ「従軍慰安婦」と言われた、性奴隷制の問題をとらえ
返し、被害女性たちの尊厳を回復していくことです。

このため僕は被害を受けたおばあさんたちを日本に招き、証言を聴く会を開く
とともに、彼女たちのもとを訪れ、戦争の実情をとらえ返し、同時におばあさん
たちとの交流を深める行動を繰り返してきました。
その過程で、何人ものおばあさんたちと親しくなりましたが、とくに台湾の阿媽
(アマー=おばあさん)たちとの中が深くなり、義理の親子のような関係になって
いる方もいらっしゃいます。


この問題を通じ、僕が強く感じてきたのは、まさに、人の足を踏みつけているものは、
自分の足を踏みつけられても声をげられないということです。

あの戦争と、戦後を振り返る時、僕の目に映るのは、日本がアジアへの侵略の
反省をまったく不十分にしかしてきてないことです。日本軍による構造化された性
暴力の問題についても、被害者への誠意ある謝罪も補償もなされていません。

そして僕はこのことと、原爆を落としたアメリカ、都市空襲という名の無差別殺戮を
繰り返したアメリカ、沖縄を住民と共に蹂躙したアメリカに、一度も謝罪を求める
ことができてこなかったことが、深くつながっていると思うのです。

アメリカは戦後65年間、一度も原爆投下を悪かったと言ったことはありません。
未だに正義だと言う人たちの方が多いのです。通常爆弾で一晩に10万人を焼き
尽くした東京大空襲などの都市空襲についても同じです。アメリカは無抵抗の
人々に、何十日にもわたり、何百機もで襲いかかった。そして最後に2発の原爆
まで落とした。

それだけではありません。肥田先生の発言でも明らかなように、その後、アメリカは
放射線被曝の恐ろしさ、核兵器の非人道性を覆いかくすために、被ばく者の方たち
を切り捨て、被ばく者への治療を著しく妨害してきました。そこでアメリカが積み上げ
た、放射線の影響を意図的に小さく捉えた見解が、福島原発事故への対応でも
適用されつつあります。情けないことに、日本政府はこうしたアメリカの姿勢を一貫
して支持し、協力し続けてきました。

さらにアメリカは、今も、アフガンやイラクを空襲し、劣化ウラン弾によってヒバク
シャを生み出し続けています。ヒバクシャは米軍兵士にも及んでおり、多くの人々が
悲劇の中に突き落とされています。そしてその米軍は、日本の基地からも出撃
しています。戦後65年経っても、日本に返還されない基地からです。


こうした理不尽な暴力の応酬を止めていくにはどうしたらいいのか。
そのためには、僕は、それぞれの国の人々が、それぞれの国の犯した野蛮な
行為をとらえ返していくことが大切だと思うのです。だから僕は広島・長崎原爆、
沖縄戦、都市空襲への怒りを胸にしながら、同時に、日本軍の犯した罪に対し
こだわり続けてきました。

一方で、この問題に深く関わる中でたくさんのことを学んできました。一つには、
あの戦争で、アジアの人々に残酷に襲いかかった日本兵の多くが、軍隊の中で
構造的な暴力を受け、度重なる虐待を受けていた被害者でもあったことでした。
彼らの多くは、挙句の果てに、本当に無謀な戦闘にかりたてられ、無残に命を
落としていった。

そうした彼らは、足を踏みつけられていることに声を上げられず、鬱屈した日々の
中で、獰猛になっていき、やがてそれを嫌というほどアジアの人々に向けて発散
する野蛮な兵士と化していったのです。ここに戦時暴力の残虐性、とくに日中戦争
から太平洋戦争における日本軍の野蛮性の特徴があります。僕はそんな無残
な体験を経てきた兵士の方たちからも聞き取りを行ってきました。

ところがこうした日本軍の行為に対して、自ら名乗りをあげ、声をあげてきた被害
女性たちは、けして恨みつらみだけで起ちあがってきのではありませんでした。
彼女たち、とくに僕が親しくしている台湾の女性たちは、日本軍の行為は憎いけれ
ども、今の日本の人たちは好きだ。日本の若い人たちには何の罪もない。日本の
若い人たちが戦争に巻き込まれないため、私たちのような思いを二度と誰かが
味わう事がないために、私たちは頑張るのだと言って、これまで何度も辛い証言を
してくださいました。

彼女たちから感じるのは、極限的な暴力を受けてもなお、人に対する愛情や思い
やり、素直で柔らかい感性を失わず、しなやかに、生きてこられた人間的強靭さ
です。そんな彼女たちの、尊厳に溢れつつ、同時になんともチャーミングでもある
振る舞いに、僕は何度も胸を打たれ、魅了されてきました。


今回、京都・東山の、法然院の講堂をお借りして、そんな彼女たちの写真展を
行います。彼女たちが京都に来た時の写真も幾つか飾りましたが、僕が撮影した
ものも多いです。

どうか、この福島原発事故の最中に、台湾のおばあさんたちの顔を見に、
法然院まで起こしください。きっと何かを発見していいただけると思うのです。

以下、案内を貼り付けます。

********************************

VOICES OF Ah-Ma 台湾 阿媽(アマー)の写真展

・・・台湾ではおばあさんのことを親しみを込めてアマー(阿媽)と呼びます.

★6月23日(木曜日)~26日(日曜日)
★時間 昼の12時~午後5時まで 入場無料
★場所 法然院 講堂(京都市左京区.哲学の道 銀閣寺より南に歩く)

★報告会 26日(日)午後2時~4時 写真展会場にて
柴 洋子さん(台湾の元「慰安婦」裁判を支援する会)のお話をうかがいます.

★主催 旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委
メールwelcomeharumoni@hotmail.com
ブログ http://syogenkyoto.blog70.fc2.com
カンパ振込先 郵便口座00970-8-167088(証言京都)

京都実行委では,2006年に台湾の被害女性を京都にお招きして証言集会
を行い,2008年も証言集会に台湾から来ていただきました.京都に来られた3人
の阿媽たちは違う言葉を話し,私たちは全く知らなかった台湾に出会いました.
好奇心が旺盛で,愉快で,愛情が深い阿媽たち,ユニークなセラピーワークショップ
に継続して取り組み,阿媽の心と身体の傷と向い合う婦援会の若いスタッフたちを
知りました.その後私たちは継続して台湾の支援団体や阿媽たちとの交流を続けて
きました.
写真集の当時(2005年),阿媽たちの平均年齢は85歳。既に亡くなられた方々
もいます.阿媽たちをより身近に感じてほしいと思い,今回の写真展を企画しました.
ぜひおこしください.

今回の写真展の写真は、台湾で日本軍「慰安婦」被害女性をサポートしている
台北市婦女救援社会福利事業基金会(通称・婦援会)が2005年8月に出版
した写真集に収録されているものです。旧日本軍性奴隷被害女性たちの現在を
写したものです。台湾人カメラマン、黄子明氏、沈君帆氏、日本人カメラマン
の矢嶋宰氏の撮影です。証言集会京都実行委のメンバーが撮影した写真も少し
展示する予定です.

婦援会は,阿媽たちの健康面,生活面,長い間のPTSDからくる問題など心理面
にも心を配り,セラピーワークショップを定期的に行い,阿媽とともに国際的な
連帯行動にも積極的に参加してきました.最近では,「阿媽たちの夢をかなえる旅」
を企画し,年老いた阿媽たちが現世においての心残りが少しでも減るように努力
しています.キャビン・アテンダントや郵便配達人など,夢を叶えた阿媽の笑顔
もぜひ見てください.


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