すみません。検査のため入院しておりました。今日から平常通りに作業を致しますので、修理のご依頼をお待ちしております。作業再開は、オークションで購入した元クロームボディー機を純正ブラック外装に交換したという個体。それなら、元のブラックを治した方が良かったような気もしますが・・・その後、プロにメンテナンスを依頼されたとのこと。セルフタイマーレバーのロック不良とのことで、あら、ほんとですね。巻上げレバーを最後まで働かせないとセルフコッキングが作動しない?? 2回巻上げなんでしょ。ファインダーの左右でピントがズレる。これもほんと。そもそも、ファインダーのピント調整をされた形跡がありますが、フィルム面と一致していませんね。では、分解をして原因を探って行きます。
この本体は、全体の特徴から概ね# 320000番代の機械だと思いますね。製造時期は1969-11月で、トップカバーの#2417XXは1968-10月付近の製造でしょうから、本体の方が約1年ぐらい後に製造されたものですね。本体は、それほど使い込まれた形跡はありませんが、巻上げギヤの軸受が、かなり磨耗が進んでいます。5段階評価で3.5ぐらいですね。画像は洗浄したユニットですが、ギヤと軸受のクリアランスが過大で遊んでいますね。使い込まれていないユニットの軸受に磨耗が進んでいるものがあるのは承知していて、潤滑グリスの塗布量の違いでしょうかね。金属は油膜が切れると急速に磨耗します。まぁ、正確なプロセスは私では説明できません。
光学系をチェックしています。この個体はリターンミラーを分解されていますね。ネジロックが外されています。リターンミラーは外周に白い曇りがありますが、32万代の個体としてはちょっと疑問。そんなに劣化はしていない頃です。20万代前期の個体に多い曇り方です。交換されたとすると、ピント調整は納得が行きます。交換されたとすると理由は分かりませんが・・
いつものように、ダイカスト本体部分を組み立てて行きます。巻上げレバーはトップカバーの個体から移植されたようです。
リターンミラーを含め、光学系には特に問題はありませんでした。ハーフミラーは、うちのものに交換されていました。部品売りをお買い頂いたのでしょう。再使用してあります。シャッターダイヤルと露出計のギヤの噛み合わせが大幅に変更されていました。今回は正規に戻して露出計を調整して行きます。
再組立でピントは問題ないですね。シャッターダイヤルとセルフレバーは他の個体から移植のため、セルフレバーの水平位置がお辞儀気味でしたので調整をしておきました。セルフレバーは部品による寸法誤差が大きいため、交換の場合は必ず再調整をする必要があります。
ライカマウントのニッコールも来ていましたね。5cm f2 ですが、絞り羽根部分のレンズが激しく曇っていました。すでに過去に清掃を受けていますが、ヘリコイドグリスの気化ガスが影響したものでしょう。コーティングはすでに剥離をしている部分がありますので、慎重に清掃して行きます。
このFTは、ブラックモデルから専用部品を移植しているため、クロームモデルからの外装交換機であることの形跡は全くありません。私的には、オリジナルブラックを元にレストアした方が良かったのではと思いますが、手放す時にはクロームからの改造機であることを明記して欲しいと思います。まぁ、無理でしょうけど・・・私のノートには記録しておきます。ニッコールについては、ご覧のようにそこそこきれいになっていますね。ヘリコイドの1ヵ所に引っかかりがありますが、稀少になりつつあるレンズですから大切にお使いください。