ブラックリペイントのPEN-FTが来ています。すばらしくきれいなペイントですね。勉強になります。オーナーさんからは、巻上げフィーリングなど気になる点がありでオーバーホールのご依頼です。シボ革は本皮か合成皮に張り替えられていますが多少歪が目立ちます。
トップカバーを分離するために、セルフタイマーレバーを外しますが、ボタンが強固に締まっていて分解できませんでした。そこで、裏技で強引に分離をしてみると、見えますかね? 接着剤で接着されていました。なぜ接着をしなければならないのか不明ですが、接着をされると再分解が出来なくなるのです。それ以前にボタンの復帰が変でした。観察してみると、↑の板バネが不自然に内側に曲げられています。先端下部の突起でボタンのテンションを掛けているので、これですとボタンが戻らないことになります。
苦労をされていますね。シャッターダイヤル取付け部の上下が削られています。これは、シボ革を軟らかな材質に変えたために、前板との段差のあるシャッターダイヤルが表面に出っ張るのを修正されているのでしょう。FTは、純正のシボ革でも、ボディーの段差を修正するために、部分的にビニールテープを下張りしてありますので、薄く軟らかな材質のシボ革を貼ることは難しいのですね。
シャッターユニットを分解して洗浄、点検しています。フライホイールを留めるナットは、緩み止めのためダブルナットになっていますが、それでも緩んでいる個体があります。この部分が緩むと、シャッタースピードが変えられなくなります。
ピンボケになっちゃいましたね。セルフタイマーレバーの作動が問題ありの原因ですが、再組立をしてみると、セルフタイマーとレリーズを繋ぐリンケージレバーが固着してレリーズと同調して動いていません。これは、稀にありますが、↑のレバーシャフトを締め込むとレバーが固着してしまう不具合。このような場合は、調整ワッシャーを挟んで干渉しないようにしてやります。レリーズの昇降に同調してレバーが動いていることに注意。
この個体のシャッターユニットは、巻上げ量に余裕がなく、2回巻上げになるギリギリの状態で、調整に時間が掛かりましたね。セルフタイマーボタンは分離時に塗装に傷が着きましたので再塗装をして取り付けます。純正では塗装ではなく、黒メッキとして可動部分の磨耗による剥離を防いでいますが、リペイントの場合は黒塗装のみですので、分解のために工具を掛けると剥離しやすいのです。